少子化が進み、企業には新卒者の確保が重要な課題になっている。だが、中小企業は給与面で大企業に後れをとっている。給与水準の低い中小企業は、ますます敬遠され、必要な人材の確保が難しくなることが懸念される。

サプライチェーン維持のために
重要となる「適正な価格転嫁」

 企業規模によって、賃上げ実施への姿勢の違いが広がるなか、2024年の「人手不足」関連倒産は8月までの累計が194件に達した。これまでの年間最多は2023年の158件だったが、すでに7月には抜いている。内訳は、「求人難」が81件、「人件費高騰」が65件にのぼる。

 賃金を上げなければ求人は難しく、賃金を上げるとコストアップが利益を圧迫する。コロナ禍で十分に業績が回復しないまま、賃上げを迫られた企業のなかには、もはやこれ以上の賃上げ余力のない企業も増えている。

 業績だけでなく、賃上げの実施状況も大企業と中小企業では差が広がっている。中小企業が持続的な賃上げを維持するには、価格転嫁などの賃上げ原資の確保が不可欠だ。サプライチェーン維持に直結する問題でもあるだけに、「適正な価格転嫁」の重要性がこれまで以上に増している。