人手不足が招いた
「賃上げ疲れ」
ただし、こうしたコロナ禍以降の賃上げを、業績改善という内的要因で実施できたのは、大企業や円安で好業績が相次いだ製造業などの一部にとどまる。中小企業のほとんどは、物価高や人手不足などの外的要因への対応で賃上げを余儀なくされたのが実情だ。その結果、2024年度の中小企業の賃上げ実施率は息切れし、低下した可能性が高い。
10月に改定される最低賃金は、2024年度は全国加重平均で昨年度から51円引き上げられた。アンケートでは、この対策について「できる対策はない」と答えた中小企業が18.7%あった。さらに、来年度以降、さらなる最低賃金の引き上げは「許容できない」と回答した中小企業も17.2%あった。2割弱の中小企業は、最低賃金上昇への対応すら厳しい状況に置かれている現実がある。
規模による差が大きい
「初任給の増額」実施率
とりわけ規模の格差が鮮明なのは、新卒採用だ。賃上げを実施した企業を対象に、賃上げの内容について聞くと、大企業と中小企業の差が最も大きかったのは「新卒者の初任給の増額」だった。売り手市場のなか、大手を中心に他社とのわかりやすい待遇の違いで高い初任給を掲げる企業も少なくない。
2024年度に初任給を増額した大企業は、調査開始以来の最高を更新し、45.6%と半数近くに迫った。一方で、中小企業は22.1%と2割台にとどまる。中小企業は、大企業の半分以下の割合になっている点に注意が必要だ。