業種をまたいでCFO職を担い、4年連続「ベストCFO」に選出
私は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)という銀行、信託銀行、証券、カード(ニコス)、リース、消費者金融(アコム)などを傘下に持つ持株会社のグループCFOや、米国中堅銀行のユニオンバンク取締役を経て、ニコンというデジタルカメラ、顕微鏡、半導体露光装置などの精密機器メーカーでCFOとして経営に携わっている現役のビジネスパーソンです。
最初に入社した三菱信託銀行時代に証券アナリストの資格を取り、2014年には金融庁の「日本版スチュワードシップ・コード」策定のための有識者検討会のメンバーになるなど、投資家サイド、すなわち資金運用サイドから資本市場に長年関与してきました。
2010年頃からは、普通株や優先株による1.6兆円の増資、優先出資証券などのメザニン(資本と負債の中間形態)ファイナンス、民間銀行初のグリーンボンド(環境改善活動に使途を限定した債券)の発行などを通じて、それまでとは反対の資金調達サイドから資本市場に頻繁にアクセスしてきた経歴を持っています。
また、MUFGの財務企画部長としてリーマンショックやモルガン・スタンレーへの出資を経験し、同社のCFOとなってからは東南アジアの銀行やアセットマネジメント(資産運用)会社のM&Aや戦略投資に関与してきました。
この間、さまざまな種類の投資家と数多く対話してきましたが、ありがたいことに、米国金融情報誌『インスティテューショナル・インベスター』が主催する世界中の投資家やアナリストの投票で、日本の銀行部門のベストCFOに4年連続で選出していただきました。そして、ニューヨーク証券取引所でクロージングベル(取引終了を告げる鐘)を鳴らすという機会にも恵まれました。
また、全米15位前後の西海岸ベースの中堅銀行であるユニオンバンクの取締役となり、米国流のコーポレートガバナンスが実際にどのように運営されているのかを、3年間実地で経験しました。
新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2020年4月にニコンに転じましたが、その年、同社はコロナ禍もあり、100年を超える歴史のなかで最大の赤字に見舞われました。しかし、社員の懸命な努力のおかげで、1年でV字回復を果たし、2021年1年間のニコンの株価は1.9倍と、日経平均構成銘柄中4位の上昇率となりました。こうしたこともあり、2023年4月に公表された『インスティテューショナル・インベスター』のCFOランキングでは、世界中の投資家(バイ・サイド)から、日本の電機・精密機器セクター29社中、3位に選んでいただきました。