会議や打ち合わせの場面でよく使われる指示や依頼の言葉が、無意識のうちに「やらされ感」を生み出してしまうことがある。言葉一つで、メンバーの主体性を奪うか、自発的な行動を引き出すかが大きく変わる。どうすればいいのか。書籍『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』の著者で人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏が、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた経験をもとに、参加者の内発的なモチベーションを高め、チーム全体のコミットメント向上につながる効果的な言葉かけのポイントを紹介する。

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「やらされ感」を払拭し、自発的な参加を促すためには?

 ビジネスシーンでは、上司や会議のファシリテーターが無意識のうちに「やらされ感」を生み出してしまうことがよくあります。

朝礼で…「今日も目標達成に向けて頑張りましょう」
企画会議で…「今日中に新しいアイデアを出してください」
部署会議で…「来週までに問題点をリストアップしておいてください」

 これらの言葉は、良かれと思って発せられていますが、往々にして参加者の主体性を奪ってしまう恐れがあり、気をつける必要があります。

×「最適だと思う案に絞り込みをしてください」

 この言葉は、特に企画会議やブレインストーミングセッションでよく聞かれます。しかし、これでは参加者は「言われたからやる」という受動的な姿勢になりがちです。

○「これから、最適だと思う案に絞るにあたり、悔いがないように過ごしてください」

 この言葉かけは、参加者の内発的動機を刺激します。

新製品開発会議で…「今日の議論が将来の大ヒット商品につながる可能性があります。後悔のないように議論し尽くしてください」
年度計画策定会議で…「来年度の成功は今日の議論にかかっています。悔いの残らない計画を立てましょう」
人事評価会議で…「この評価が社員の未来を左右します。後悔のない判断をしていきましょう」

コミットメントを引き出す言葉がけの方法

「悔いを残さないように」という言葉は、相手のやる気に刺激を与えるため、ビジネスシーンで強力な効果を発揮します。

自己省察が促進できる
 ×「今年の目標を立ててください」
 ○「今年、どんな成長を遂げたいか、悔いのないように考えてください」

主体的な参加意識が醸成できる
 ×「この問題について意見を出してください」
 ○「この問題の解決が会社の未来を左右します。悔いの残らないように意見を出し切りましょう」

責任感の向上が期待できる
 ×「この案件は君に任せるよ」
 ○「この案件の成功は君にかかっている。後悔のないように全力を尽くしてほしい」

チーム全体のモチベーション向上が期待できる
 ×「今年度の目標達成に向けて頑張りましょう」
 ○「今年度の目標達成に向けて、一人一人が悔いのない貢献をしていきましょう」

 これらの言葉を受け取った社員は、自然と「自分にとって最適な行動とは何か」「どうすれば後悔しないか」を考えるようになります。その結果、より深い思考と主体的な行動が生まれ、個人とチームのパフォーマンス向上につながります。