三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第7回は、「東大合格者のスマホの使い方」を解説する。
「スマホ1つで東大合格!」は
本当に可能なのか?
東大合格請負人・桜木建二は東大合格を目指す2人の生徒・早瀬菜緒と天野晃一郎に対して、東大専門コースの2つの方針を告げる。それは「スマホ1つで勉強して東大に合格する」ことと「今後二度と『頑張る』と言わない」ことだった。
ネットの情報やアプリを駆使して「スマホ1つで勉強して東大に合格する」ことは、果たして本当に可能なのだろうか。
情報化社会の今日、大学受験に関する情報はネット中に溢れている。東京大学などの有名大学であれば、過去問やその解答解説など無数に見つかる。YouTubeを見れば過去問を解説してくれるチャンネルは山ほどある。
中には学校の先生顔負けの講義を提供してくれるYouTuberもいて、超一流進学校であっても定期テスト対策にYouTubeを活用する生徒がいるのは事実だ。
しかし、私は「スマホ1つで勉強して東大に合格する」ことには懐疑的だ。
なぜならば、「東京大学への合格」を売りにするビジネスが存在するからだ。
東大入試の独自情報に添削指導…受験対策をスマホで完結するのは難しい
「勉強の自己管理」はスマホアプリが便利
東大対策を専門とする塾やコースは、一般には出回っていない独自の情報をもとに受験対策を施す。それは、より効率的、正確、論理的な解答はもちろん、合格者・不合格者の再現答案をもとに詳細に分析されたデータだ。
当然それらは、「お金を払った人」にしか提供されず、ネット上には公開されない。流出したとしても、消費者(受験生)はそれが本当のものかどうか判断できないし、何よりそんなことを悠長にしている時間はない。
実際の東京大学の入試問題は単に知識を問うものではなく、それらの知識を前提とした高度な思考力や表現力を問うものだ。その指導となればさらに多くの経験が必要となる。
一方で、東京大学への入学志願者は1万人程度だ。つまり、東京大学合格を目的とする専門的な指導を、誰もが閲覧できるネット上で行うことは割に合わないのである。
さらに、一方向での配信では、添削指導ができない。
解答のほとんどを論述形式の問題が占める東京大学の入試において、1点でも多くの点をもぎ取るためには、高度な指導員によるきめ細やかな添削が求められる。特に国語や数学などは自分では正解だと思っていても、0点をつけられることはザラだ。
スマホを利用して東京大学の入試問題を理解したり、正解したりすることはできる。だが、合格するためには想像を絶する努力が必要になるだろう。
スマホを効果的に利用することには大賛成だ。
私のおすすめは「スタディプラス」というアプリだ。参考書や教科ごとに勉強時間を記録でき、友達と共有できる。
自分の勉強習慣が記録できるほか、「友達から見られている」という意識が働く。受験勉強のみならず、定期テストや資格へ向けた勉強にもうってつけだ。
スマホに夢中になって勉強が疎かになるのでは、という意見もあるかもしれない。
しかし、実際に東京大学に入って同級生に聞いてみると、受験期にテレビやYouTubeを全く見ていない、という人は意外と少数派だ。むしろ、1日に数回そういった息抜きをしていた、という人の方が多い。結局、適切に自己管理ができる人が受かるのだろう。
ちなみに、私の母校での進路学年集会で進路指導主任から興味深い話をされたことがある。いわく「受験生になってスマホを解約した生徒は必ず現役合格した」そうだ。
スマホを使うにしても、使わないにしても、使い方や覚悟が求められるのが東大入試である。