図表:CF計算書の基本構造筆者作成 拡大画像表示

 1つ目の営業CFは本業で稼いだキャッシュを示しており、通常はプラスになる。営業CFがマイナスであるということは、会社が本業でキャッシュを稼げていないことを意味する。営業CFのマイナスが続いている会社の業績は良いとはいえず、注意する必要がある。

 2つ目の投資CFは投資に充てられたキャッシュを示している。一般的に、成長性の高い成長期の会社においては相対的に投資CFのマイナス幅が大きくなり、成長性の低い安定期の企業では投資CFのマイナス幅が小さくなる傾向がある。成長期の企業では、事業拡大のために大きな投資を必要とすることが多いためだ。

 また、営業CFと投資CFを合計したものを、「フリー・キャッシュ・フロー(FCF)」と呼ぶ。これは、営業CFから純投資額を差し引いたものに相当する。FCFがプラスであるということは、必要な投資を行った上で、稼いだキャッシュを有利子負債の返済や配当金の支払いに回す余裕があることを意味している。

 3つ目の財務CFには、資金調達や返済による現金収支が示される。この財務CFは、成長期の企業ではプラスに、安定期の企業ではマイナスになることが多くなる。成長期の企業では成長投資のための資金が必要となるため、新たな資金調達が行われることで財務CFがプラスとなるのに対し、安定期の企業ではキャッシュリッチ(現金が潤沢)になるため、有利子負債の返済、あるいは配当金の支払いや自社株買いといった株主還元にキャッシュが回される傾向にあるためだ。

 さて、このCF計算書の基本構造を踏まえて、後編ではPPIHとペッパーFSの大規模投資の狙い、そしてその後のCFの推移から見る「良い投資」と「悪い投資」の見分け方について解説しよう。

矢部謙介(やべ・けんすけ)/中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授。ローランド・ベルガー勤務などを経て現職。マックスバリュ東海社外取締役も務める。X(@ybknsk)にて、決算書が読めるようになる参加型コンテンツ「会計思考力入門ゼミ」を配信中。著書に『決算書の比較図鑑『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』『粉飾&黒字倒産を読む』(以上、日本実業出版社)など。
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