しかし、地方移住にギャップは付き物。果たしてこの1年半、目論んだ通りの会社員生活は実現しているのだろうか。

「すべてが理想通りとまでは言いませんが、楽しんでいます。本当は、会社帰りに先輩と飲みに行ったりすることに憧れもあったのですが、それ以上にとにかく電車通勤がイヤでしたから(笑)、これは仕方がありません」

 会社内での人間関係に悩むこともなく、仕事内容にも満足している。それでも何らかの不満はないものかと深堀りしてみると、ようやく出てきたのは「たまの展示会で東京へ行かなければならないこと」だというから、やはり徹底している。

休日には登山やパンづくりを楽しむ

「洗車機というのは当然、水を使いますから、そのまま拭かずに放置すると水垢が残ってしまうんです。そこで弊社の製品にはオプションで、不純物を取り除いた純水を使って洗える機能があるんです。我々も福利厚生の一環で使わせてもらっているのですが、拭き上げの手間が軽減されるのはとても大きいです」

 明るい表情でそう語る加藤さんの姿を見れば、Iターンという選択が大正解であったことが伝わってくる。もちろん、繁忙期には多少の残業は発生するが、ワーク・ライフ・バランスを損なうほどではなく、今のところ快適な労働環境が維持されているという。

 さらに休日には趣味の登山に繰り出したり、パンづくりに励んでいるというから、いかにも豊かな暮らしぶりだ。

「田舎暮らしなので部屋が広いですから、オーブンレンジも無理なく置けます。おかげで毎朝、自作のパンを食べてから出勤する日々です」

【地方で働く】東京を脱出したい一心で長野の 「門型洗浄機」メーカーに新卒入社、何が彼を突き動かしたか?加藤さん手作りのパン 写真提供:本人