2022年、キリンビール出身の3人が長崎・五島列島の小さな村にクラフトジンの蒸留所を作った。50歳を機に、その後の人生を考えて起業を決意した門田クニヒコさんと、門田さんに誘われて一緒に夢を追いかけることを決めた小元俊祐さんと鬼頭英明さん。退職から蒸留所設立までの経緯や、移住後の仕事や暮らしぶりについて聞いた。(取材・文/フリーライター 手柴史子)
仕事は充実していたが…
50歳時のキャリア研修で決意
長崎港から西へ約100km、五島列島の南西の端に位置する福江島北部の小さな集落・半泊(はんとまり)に、五島つばき蒸溜所は建っている。
キリンビールを退職した門田クニヒコさん、小元俊祐さん、鬼頭英明さん、の3人が長崎県の五島列島に移り住み、五島つばき蒸溜所を開業したのは2022年のこと。蒸溜所は2年目を迎え、商品であるクラフトジン「GOTOGIN(ゴトジン)」の生産量は月3000本を超えた。
3人はどのような経緯で五島列島に移住し、クラフトジンを作るようになったのか。それぞれがキリンビールを退職した当時を振り返る。
キリンビールで長く商品開発に携わっていた門田さんは、「キリン 極生」や「氷結(R) ストロング」「一番搾り フローズン(生)」などの製品を世に送り出してきた。仕事にはやりがいがあり、毎日の生活は充実していた。
「よく退職の理由を聞かれるのですが、本当に不満はなかったんですよ。給料も食品会社の中では高い方だと思いますし、仕事も楽しんでいました」
だが、50歳時に社員が受けるキャリア研修をきっかけに、起業を決意する。