太陽電池パネルが安くなっても
発電のコストはさほど下がらない

 また指数関数的変化の逆の現象として、太陽電池パネルのコストが驚くほど安くなり、太陽光発電が奇跡のようなブレイクスルーになるだろうという記事は多々、書かれてきたし、そうした言い分が広く知られるようになった。

 だが、太陽電池パネルのコスト低下が実際の太陽光発電のコストの唯一の要因であるかのように熱心に報じる記事に関しては、しっかりとチェックすることをお勧めする。

 さもなければ、1950年代半ばに原子力発電の熱心な推奨が始まった頃と同じ状況におちいってしまうおそれがあるからだ――「太陽光による発電はあまりにも安すぎて計測できないほどで、まさにタダ同然だ」と言われて真に受けるようなものなのだから。

 現実に目を向けると、アメリカの住宅用太陽光発電システム(パネル枚数22)の詳細なデータでは、パネルそのもののコストは総費用の15%程度にすぎない。残りは電気部品や架台(パネルを屋根や整地された地面に固定する台)、パワーコンディショナー(直流電気を交流電気に変える)、人件費、その他のソフトコストだ。あきらかに、鋼鉄やアルミニウムといった材料から、送電線、認可、検査の費用、はては消費税にいたるすべてのコストがゼロに近づいているわけではない。