「日本プロ野球株式会社」は
どうすればできるのか

 ただ、そのためには野球界の大改革が必要です。メジャーのように野球界全体でビジネスをする、つまり「日本プロ野球株式会社」という視点での経営改革が必要なのです。

 メジャーの場合は、テレビやネット配信について、日本と比べ物にならないくらい制度がしっかりしています。たとえば、メディア大手ターナースポーツとの放映権延長契約を2022年から7年総額37億ドル(約3900億円)で、FOXと2022年から放映権契約を7年総額51億ドル(約5400億円)で、映像配信会社DAZNと3年総額3億ドル(約315億円)で締結しました。この大きな収入を、大リーグ各チームで平等に分けます。FOXとターナーだけで、2022年からの7年間に渡って毎年総額約1320億円の放映権料が各チームに分配されるのです(各チームには約44億円の分配)。

 一方、日本は巨人が2019年にDAZNとの間で年間20億円の放映権契約を締結するなど、各球団が単体で交渉しています。これでは、不人気球団が買い叩かれるのも無理はありません。日本もメジャーのように、野球界全体が一つの会社として儲かるシステムを考える必要があります。

 かつての日本球界は、巨人軍中心に動いていました。巨人軍の創立者、正力松太郎は「将来は日米決戦」を考え、チームを整備していました。一方、圧倒的に人気がある巨人との試合を増やし、観客動員も放映権料も増やしたい球団がほとんどで、いつの間にか日米決戦どころか球団数を10球団に減らす「1リーグ構想」を巨人中心に提唱する事態となり、選手会がストライキをしたことはご記憶のファンもいるでしょう。

 選手の力がメジャーに対抗できるほどになった今こそ、今度は経営力を大リーグに学び、放送権・通信権の一括交渉を行う体制にしてはどうでしょう。観客数を増やすための新球場建設と、自治体に納める固定資産税や開発費への補助などの交渉、そしてスポンサー獲得に動き、通称「ぜいたく税」のように、儲かっている球団が球界全体に利益を還元するシステムの導入も不可欠です。

 もし16球団となれば、当然観客動員数も増えます。カードも増えるので、放映権料もアップします。キャラクターグッズなども、今はどんどん新しいサービスが出ていて、メジャーのグッズ利益は相当額に上っています。また、ポストシーズンにワイルドカードを入れ込むことで、さらに試合数と収入アップが期待できます。

 現在、一般的に言われているプロ野球16球団構想では、増設するチームと球場候補案に沖縄や愛媛は入っていません。候補地の人口と球場のキャパなどが理由ですが、地方の場合は土地代が安いので広大な駐車場が確保でき、隣県からの観客も期待できます。また、リーグそのものをセ・パではなく、東部・中部・西部に分けて、選手の移動費を節約するなどの方法もありえます。