銅相場「1万ドル」回復も中国景気刺激策は織り込み済み、米利下げなど強弱材料で一進一退Photo:PIXTA

銅相場は1万ドル前後の一進一退の動きを続けそうだ。中国による景気刺激策など好材料はすでに織り込み済み。米国の利下げ観測や地政学リスクなど強弱の材料が綱引きをしている状況が続くとみられ、相場が上下に大きく振れることはないだろう。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

中国需要鈍化懸念などを背景に
8月上旬に安値を付ける

 世界景気や中国景気に敏感な銅相場は、8月上旬に1トン当たり8700ドルまで下落した後、上昇傾向に転じ、9月下旬には1万ドルを回復していたが、10月に入ってからはやや軟調に推移している。

 下落局面が続いていた夏場からの相場動向を振り返る。

 7月3日は、数週間前に比べて強くなったとされる中国需要、プログラム取引の買い、米利下げ観測などを背景にやや上昇幅が大きくなった。しかし、11日は、LME(ロンドン金属取引所)指定倉庫の在庫の増加を受けて需給緩和感が強まり、銅相場は下落した。

 15日は、4~6月期の中国の実質GDP(国内総生産)が前年比4.7%増にとどまり、市場予想を下回ったことで同国の金属需要停滞が懸念され、銅は下落した。翌16日も中国の銅需要への懸念が続き、銅は続落した。

 18日は、中国共産党の第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)で具体的な景気刺激策が打ち出されなかったことが売り材料になり、銅は下落幅がやや大きくなった。19日も中国の経済政策への失望が続き、銅は続落した。

 週明け22日も中国の景気や金属需要への懸念が続き、銅は続落した。中国人民銀行は、主要な短期政策金利である7日物リバースレポ金利と銀行貸出金利の指標となるLPR(ローンプライムレート、最優遇貸出金利)を引き下げたが、市場の反応は鈍かった。

 29日には、前週末からの株価下落などを受けたリスクオフ・ムードが銅相場にも波及し、値を下げた。31日は上昇幅がやや大きくなった。米民間雇用サービス会社ADP(Automatic Data Processing)による全米雇用報告の弱い内容を受けてドル安が進んだことが買い材料になったほか、前日に中国共産党が中央政治局会議を開催し、一連の政策措置により内需を拡大すると表明したことで景気刺激策への期待が高まった。

 次ページでは、8月以降の相場を検証しつつ、銅相場の先行きを予測する。