フィジーにも、私のかつての教え子で、柔道のナショナルチームの指導者として活躍している人がいる。

 このままではいけない――。

 私はせき立てられるように、最初の留学先であるニュージーランドに向けて旅立った。2017年春、私が56歳のときだった。

 約1年間におよぶ海外生活を始めた。主にニュージーランドに滞在しながら、オーストラリアとフィジーにも足を延ばした。

 ニュージーランドは、2024年5月末時点でラグビーワールドランキング3位(男子)である一方、日本は12位と、実力的に大きな差がある。

 オーストラリアには約3ヵ月間滞在した。高校のラグビー部の監督で、セブンズ(7人制ラグビー)ナショナルチームのヘッドコーチも務めた知人の手配で、同国最古の名門校・シドニー大学の寮に宿泊し、教員・学生たちと寝食をともにした。

 ラグビー指導者・教員として市内の高校5校を訪れ、教育システムやコーチングを学ぶ一方、語学学校にも通って英語に磨きをかけた。

指導者とフラットな関係ゆえ
選手に「やらされ感」がない

 現地の教育やラグビー指導の実態を知り、私は驚いた。指導者と選手との関係がじつにフラットなのだ。彼らの練習風景を見ていても、コーチと選手、監督と選手という感じがしない。