各州の首相に絶大な権限があるドイツ
増田 「極右躍進」と欧米メディアで大きく報じられたように、ドイツの州議会選挙では、極右政党と呼ばれる「ドイツのための選択肢(AfD)」が得票数を大きく伸ばしました。
池上 9月1日に選挙が行われたドイツ東部のチューリンゲン州では第1党に、隣接するザクセン州でも第2党と、まさに躍進。
9月22日のブランデンブルク州の選挙では、国政で連立与党を組む社会民主党(SPD)が何とか第1党を守ったものの、メルケル前首相が党首を務めていたキリスト教民主同盟(CDU)は過去最低の得票率でした。
SPDと共に国政で連立を組む緑の党と自由民主党(FDP)は、いずれも議席獲得に必要な5%の得票を得られず、緑の党は議席ゼロの惨敗を喫しています。
増田 ドイツの州議会は日本の県議会や市町村議会とは位置付けが違います。ドイツは連邦制であり、各州に首相がいて絶大な権限を持っています。日本のように首長選挙と議会選挙が別々に行われるのではなく、州議会で多数を占めた勢力から州の首相が選ばれます。しかも、それぞれの州が独自色の強い教育を行うことができます。
池上 もし極右政党から州の首相が出た場合、「ナチス擁護」や「移民排斥」の色を帯びた教育が行われる可能性があるわけです。だから州議会選挙にもかかわらず、「極右躍進」が警戒されているんですね。州の首相はまだ決まっていませんが、AfD以外の4党は全てAfDとの連立を拒否しているようです。
増田 チューリンゲンでもザクセンでもAfDの得票率は30%を超えました。ブランデンブルクも含め、旧東ドイツ地域で続けざまにこうした結果が出たことは重要です。2015年にドイツの連邦議会選挙を取材した際もAfDはドイツ東部で得票を伸ばし、12~13%程度を獲得。驚きの声が上がりましたが、9年の間に得票が3倍近く伸びたことになります。