ところが、2023年に広島で行われたサミットにおいては、日本の1人当たりGDPは参加国中で最低になってしまった。この20数年の間に、極めて大きな変化があったのだ。
こうなってしまったのは、円安や金融緩和といった目先の政策に終始して、新しい技術の開発やビジネスモデルの導入、あるいは人材の育成といった問題をなおざりにしたからだ。アベノミクスが導入されても、日本の劣化は止まらなかったということだ」(東洋経済オンライン)。
実際、石破首相は、アベノミクスの再点検が必要だとしていました。しかし、総選挙ではこの問題を封印してしまいました。党内世論や、まだ数が多い安倍派議員に遠慮していたのです。しかし、多くの安倍派議員、しかも大物が落選し、高市氏にも力がなくなりました。石破氏の後見人である岸田氏もアベノミクス修正論者です。
そして、立憲の野田氏は安倍政権の経済政策「アベノミクス」について、「明らかに失敗だ。格差が拡大した」と批判、人への投資による賃上げを唱えました。つまり二大政党の党首がアベノミクスの修正に乗り出すことに前向きなのです。これで新自由主義による格差社会に歯止めがかかることになるでしょう。物価高や円安問題も、この根本が解決しないと、目先のバラマキしかできません。
石破首相は居直ればいいだけ
国会には最強タッグを組める相手が
要するに、石破首相が居直ればいいのです。首相の地位は強く、簡単に辞めさせるわけにはいきません。自身のやりたいことをやるための最大の理解者が敵対政党の党首なのですから、こんなにいいことはありません。
「楽観的すぎる」と思われるかもしれませんが、このまま石破首相が党内意見に従っていると、次期参院選までの退陣は目に見えています。本人も今は、「思い切り自分の思う通りやればよかったと」思っているはずなので、大ナタをふるう可能性は十二分にあります。ある人物が「日本の保守は安全保障はあっても人権がない。日本のリベラルは安全保障がなくて人権がある」と言っていましたが、今回は二大政党の党首がその双方を備えています。
小さな人事や権力争いではなく、これぞ国難にあたる国会であり、与党・野党の党首であるというところを見せてくれる「石破・野田劇場」に期待したいものです。
(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)