マイケル・ポーターも
議論した「国の競争力」

 国の競争力については、企業戦略論の大家であるハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が30年以上も前から展開してきている。

 その著書『国の競争優位 [上] [下]』(ダイヤモンド社刊、日本語翻訳初版1992年)によれば、国の競争力はイノベーションの能力に基礎を置く。そして、イノベーションが起こるのは自国内に恵まれた環境があるからではなくて、プレッシャーと挑戦のためである、とされている。

 現在の日本が置かれている状況に照らすと、なんとも心強い言葉だ。そして、イノベーションは、孤立して起こるものではなく、相互に連結した産業のクラスター全体で起こるとされている。

 もちろん、国の「競争優位」を議論するとき、そもそも競争優位とは何かを理解しなければならない。ポーター教授は、企業の場合と似て、国の場合にも競争優位とは低コストの優位性と差別化の優位性とし、低コストの優位性から差別化の優位性に進んでいくと説く。

さらに競争優位は、(1)生産要素における「要素条件」、(2)製品・サービスへの「需要条件」、(3)国際競争力を持つ供給産業や関連産業が存在するかという「関連・支援産業」、そして(4)その産業における「企業の戦略、構造、およびライバル間競争」によって規定されるという。

 この点、ポーター教授は、かつての日本では関連・支援産業から産業が生まれ、その産業がまた関連・支援産業となって次の産業が生まれ、国としての競争力につながってきたと分析している。