たとえば、光ファイバー・電線・ワイヤーハーネスなどを得意とする古川電気工業からその需要先である重電分野を手掛ける富士電機が生まれ、その富士電機から電話機器関連で富士通が生まれ、その富士通からは工作機械のファナックが生まれたというように、数珠つなぎの内部多角化によって競争力ある企業が育ち、それが世界的にも競争力ある産業を育ててきたように見える。
そして、いまの日本を前提にすると、ポーター教授によって「特異で優れた価値を提供できる能力による」ものとされる「差別化の優位性」が、将来へ向けた鍵になりそうだ。
農業輸出大国となったオランダ
に見る差別化の優位性
国についての「差別化の優位性」の議論では、シンガポールやスイスが引き合いに出されることも多いが、ここではオランダに注目してみたい。
オランダの国土は九州とほぼ同じ大きさで、人口は約1800万人ほどであり、2023年時点のGDP約1兆1200億ドルは世界第16位である。その一方で、さきほどのIMD「世界競争力ランキング」(2024年版)では第9位にランクされている。
そのオランダで注目されるのは農業で、農作物の輸出金額では米国とブラジルに次いで世界第3位となっている。まさに、オランダという国の主要な競争力のひとつになっている。
オランダの農業も、かつては小さな農家がそれぞれの経験によって営むものであった。それが輸入品との価格競争などにより、付加価値の高い作物を高い効率性をもって生産して輸出するというモデルを指向するようになった。そして、2018年には「オランダ農業ビジョン2025」が策定され、経済的にも社会的にも持続可能な輸出型農業への産業構造の転換が強力に進められてきた。