若者の関心がリアルのスポーツイベントからオンラインにシフトしている背景もあり、大リーグの今回のルール改正は若者の時間の使い方への意識や価値観の変化を反映した生き残りの策であり、スポーツへの関心自体がスマホやデジタル空間における他の娯楽に奪われてしまうことへの危機感の表れとして読み取れます。

 現代人の「時間」に関する感覚の変化に迅速に対応したことで、大リーグが野球本来の魅力を高めたように、利用者目線で提供サービスの本質価値を高める努力ができる企業・業界のみが選ばれ続けていくでしょう。

タイパを重視するZ世代
背景にある「自由時間の少なさ」

 コスパに限らず、20~30代の消費者の間では、時間やお金や労力をかけずに、あらゆる消費行動を完結する価値観に支持が集まります。とりわけ、Z世代はタイパを重視する傾向があることが指摘されてきました。四六時中、スマホで大量の情報を追いかけねばなりません。増え続ける情報に対応するためには、タイパが欠かせないというのは理にかなっています。

 さらに、タイパが志向される背景には、若者が自分の好きに使える自由な時間が少なくなっていることが挙げられます。SNSの利用時間をたずねた調査では、1日の利用時間が「3時間以上」という回答は、10代で約半数である44.6%、20代で39.1%となり、全世代平均(10.5%)を大きく上回りました(消費者庁「消費者意識基本調査」2021年度)。

 LINEで交流するグループは1つや2つではありません。大学生を例にとれば、同じ学部・学科の同級生からゼミやサークルの仲間、さらにはバイト先や小中高の友人など複数のコミュニティに属しています。

 これに加えて、インスタグラムで友人や知人の投稿をフォローして……と常に友人とつながり、日々せわしなくコミュニケーションをとっています。身の周りのあらゆることに対してメリハリや優先順位をつけたり、映画・ドラマ・配信動画を早送りで視聴したり、ながら見するスタイルが支持されるのも当然です。

 スマホとSNSの普及で情報過多となり、生活者の時間意識は大きく変わりました。