スマホやSNSの普及で現代人の生活意識は大きく変わり、「時間対効果」いわゆるタイムパフォーマンスの高さが重要視されるようになった。この「タイパ」を疎かにしていると、ビジネスの世界では命取りになることも。経済学者・宮下雄治氏がビジネスシーンでの「タイパ」の重要性を解説する。※本稿は、宮下雄治『こうして顧客は去っていく サイレントカスタマーをつなぎとめるリテンションマーケティング』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。
ビジネスシーンで再注目
タイパと「時は金なり」
費用対効果の高いサービスに支持が集まる一方で、「時間対効果」すなわち費やした時間に対する成果や満足度の高いサービスも根強い人気を得ています。費用対効果のコスパに対して、いわゆる「タイパ(タイム・パフォーマンス)」と呼ばれる価値観で、時間効率を求める消費が急増しています。
提供するサービスやコンテンツの種類が増えれば増えるほど、ユーザーのさまざまなニーズに応えることができますが、それによって、お目当ての1つを見つける時間を要して満足度を下げることになっては元も子もありません。サービスやコンテンツの質や量も大切ですが、過去の履歴をもとに最適なレコメンデーションができるシステムの有無が顧客離脱の大きなカギをにぎっているのです。
ECにせよ、サブスク、動画サービス、SNSのいずれでも、タイパへ対応しているサービスが顧客の維持に成功しています。タイパへの対応の遅れが、デジタルサービスはもちろんのこと、リアルのビジネスでも命取りになりかねない状況が生まれています。
昔から「時は金なり」と言います。時間を有効に使う、無駄にしないという考え自体はこれまでも大切にされてきたわけですが、あらためてタイパが注目される背景にはデジタルが広まった現代ならではの事情があります。