現代人に共通することは
「損失を回避したい」から「やめる」
一方で、本当に価値がある、大切だと思えるものには時間やコストをかけます。好きなもの、関心のあるものには入念に情報収集を行ない、それ以外には徹底的に無駄を排除することでバランスを取ります。
コスパやタイパは、今やZ世代の若者に限らず、多くの現代人に共通する要素となりつつあります。書店でビジネス書を眺めると、「〇冊を1冊にまとめた」や「60分でわかる〇〇」といったコスパやタイパの良さを強調したタイトルの書籍が溢れています。一般書でも同様で、名作やベストセラーを1冊にまとめた本が並んでいます。限られた時間で効率良くポイントを理解したいという現代人のニーズにマッチした書籍が売れていることがよくわかります。
類似したサービスが乱立する現代社会において、「この時間を他のことに使っていたら……」「このお金を他のことに使っていたら……」という機会損失を感じやすいのが現代の消費者です。
損失を回避したいという心理が、早々にサービスから離脱するというジャッジメントをすることになり、サービス離脱の動機になっているのです。
消費者の「時短・簡単」ニーズに
的確に対応した「Qコマース」
時間を無駄にしたくないZ世代にとって、すき間時間を有効に活用する「タイミー」など、スキマバイトサービスの需要が急増しています。大学生にアルバイト事情をたずねると、メインのアルバイトにスキマバイトを掛け持ちしているというケースがとても増えました。
タイミーが行なった調査において、アルバイトの目的をたずねたところ、「空いた時間を効率良く活用したいため」と回答した学生が30.8%おり、タイパを意識して、スキマバイトをしている傾向が確認できます(タイミープレスリリース、2023年6月15日)。
EC業界では、ネットスーパーの競争が激化しています。生鮮食品から日用品まで広く扱うネットスーパーでは、迅速な配送サービスがカギをにぎります。従来のネットスーパーの場合、翌日配送が一般的で、どんなに早い即日配送でも3時間程度は要していました。
しかし、今日快進撃を続けるネットスーパーは「Qコマース」(クイックコマース)という名称のもと、従来の常識をはるかに超える即時配送を実現しています。
Qコマースはアプリで食品や日用品のオーダーを受けてから、30分ほどで自宅まで届けるサービスを提供します。Qコマースを牽引するスタートアップの「OniGO(オニゴー)」(日本)や「クーパン」(韓国)は、10分の「ロケット配送」を実現しています。
ダークストアと呼ばれる配達専門の店舗を介し、注文を受けて梱包するのに3分、そして電動アシスト自転車で7分以内に到着する範囲(半径1.5km以内)に商圏を絞り込んでいます(日経クロストレンド、2021年9月7日)。