ーー家庭ではできない教育ですね。
私学はそれぞれの教育理念に従ってさまざまな仕掛けを用意し、生徒自身に生き方を考えさせている面がありますよね。
感受性の豊かな時期にどう生きるかを考えて自分の中に生きる軸をつくることが精神的に強くなる契機だと思います。自分で考えて自分で意思決定ができるようになることが大事です。
日常生活でもそうしたクセを付けておかないと、会社に入っても「部長、これはどうしますか?」となってしまう。
言われるのを待つ「思考停止」では、伸びてはいかないですよね。自分の意見を持たなきゃダメなのに、親は心配だから常に先回りして動いてしまう。勉強法にしても、受験校を決めるにしても本人の意思を聞いてほしいですね。
そうした積み重ねが“自立”につながるのではないでしょうか。子どもが自分の価値観に従って考えて、それを口に出して伝える機会をつくることが、家庭でも学校でも必要だと考えます。
“校長が強い”学校が抱える
「目に見えないリスク」
ーー話が変わりますが、それぞれの私学には、そこでしか感じられない独特の雰囲気がありますよね。
それがすごく大事なんです。DNAに刷り込まれているかのように文化が育っている学校は、いきなり校長が代わっても基本スタンスは変わらない。先生方が話し合ってずっと長い時間をかけて作られてきたものだからです。
ーー訪れる度に校長先生が代わり、雰囲気もコロコロと変わっている印象の学校もあります。
低迷している空気を一新したい学校が、校長を代えて大胆なイメージチェンジを図ることがあります。進学校であっても、学校を活性化させるためのカンフル剤としてトップを代えるということはあります。
例えば、西武文理は昨年、校長が交代したんですが、その方は38歳のブラジル人。サンパウロ大学で日本語教育を専攻し、国費留学で来日して、西武文理大学で留学生に日本語を教えていた先生です。