他者への興味・関心はエンゲージメントにも影響する

 他者への興味・関心の度合いは、メンバーや組織に対するエンゲージメントにも影響する。人は誰からも興味・関心を示されないと、その組織やメンバーに対しても無関心になりやすい。

 これは人対人のみの関係ではない。部署間や会社間の関係にも当てはまる。
 
自部署の人やコトにしか興味を示さない。社内の人の話にしか聞く耳を持たない。そのような組織と積極的に関わりたいと思うだろうか。好奇心が旺盛な人、意欲的な人ほど敬遠するだろう。ものごとには返報性の原理というものが働く。エンゲージメントにおいても然りである。

 ただし、むしろ放ってくれておいたほうが心地よく、エンゲージメントを適度に高められる人もいるから世の中面白い。他者への興味・関心がある組織、ない組織のどちらにもメリットとデメリットがある。両極端に陥るのではなく、適度な距離を保っていきたい。

ミーティング前の「プチ雑談」で自己開示する

 他者に適度に興味・関心を持ちつつ、過干渉しない。その文化を創るには、まずはあなたから自己開示をしてみよう。

 自分の過去の経験、成功体験や失敗体験、今の業務内容、どんな気持ちで日々の仕事に取り組んでいるか、どんな仕事をしてみたいか、プライベートで取り組んでいること、勉強していること、好きな食べ物、お気に入りのダム(おっと失礼。これは筆者の趣味である)、何でもかまわない。

 会議開始前の隙間時間などは狙い目だ。早めに集まった人同士で「週末は秩父に釣りに行ってきたんです」など、カジュアルな話題で自己開示して相手の反応をうかがってみる。あなたの自己開示を受けて一人、また一人と周りの人が自己開示をしてくれるかもしれない。
 誰かが自分の趣味の話を語り出したら「この人とは趣味の話ならイケるな」と知ることができる。あなたが先に自己開示をすることで、相手がどんなテーマの話にのってくれるか相互に確認することができる。

 逆に、相手があまりに無反応だったり、表情を曇らせたテーマについてはそれ以上触れないようにしよう。

相手との関係を適度に保つ

 今まで誰も自分のことを話す人がいなかったから、誰も自己開示をしなかった。誰も他者に興味・関心を持とうとしなかった。そのような職場を筆者はこれまで数多く見てきた。それなら、あなたが最初の一人になろう。

 その際、自分にとって心地よいコミュニケーションのスタイルを話すのもよい。

「デスクにいるときには気軽に声をかけてね。でも作業に集中したいときは、会議室にこもるかテレワークにします!」

「じつは前職にあまり良い思い出がないので、前職のことは触れないでいただけたら嬉しいです!」

「今日は企画書の作成に集中したいので、話しかけないでもらえたら嬉しいです!」

 徐々に職場の空気が打ち解けてきたら、他者にも関心を示し、質問や相談をしてみよう。今まで誰にも関心を持ってもらえなかった、話を聞いてもらえなかったから心を閉ざしてしまっている人もいるかもしれない。あなたの一言から、協力関係が生まれるかもしれない。

 ただし繰り返しになるが、相手が難色を示したときにはそれ以上深入りしない。そうして、お互いに心地よい適度な距離を保っていこう。

 一歩踏みだす!

 ・まずはあなたから自己開示をする
 ・相手に質問や相談をする。ただし難色を示されたら深入りしない

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。