富士通が半導体事業から“撤退準備完了”――。大手電機メーカーの富士通が、半導体のマイコン(マイクロコントローラ)事業を、米半導体メーカーのスパンションに売却するための最終調整に入ったことが分かった。条件がまとまり次第、発表する。
富士通は半導体事業の再編を急ピッチで進めている。2月に半導体事業の構造改革費用として、1120億円の特別損失の計上を発表。13年度決算予想は、950億円の最終赤字に下方修正した。このうち半導体を含むデバイスソリューション部門の売上高は前年度比7.6%減の5400億円、営業損益は120億円の赤字と苦しい見通しになっている。
富士通の半導体事業は、AV機器などに使われるシステムLSI(大規模集積回路)事業と、車載向けや産業機器向けのマイコン事業が大きな2本柱だ。なかでも車載向けマイコンの世界シェアは約5%で、世界でも5、6番手の位置につけている。
このうち、システムLSI事業については、設計・開発部門をパナソニックと統合して新会社を設立することで2月に基本合意し、日本政策投資銀行に出資を求めている。当時、富士通は残されたマイコンとアナログ半導体事業について「あらゆる可能性を検討する」としていた。
昨秋以降、富士通は製造拠点など半導体事業の切り離しを加速させている。昨年10月に岩手工場を自動車部品大手のデンソーに譲渡し、同12月に会津など後工程3工場を半導体製造会社のジェイデバイスに売却。最新の製造ラインを持つ三重工場は、台湾の半導体受託製造大手、TSMCと設立する新会社に移管する方針だ。
人員削減も進行中で、半導体部門の国内外の従業員約2000人を対象に、早期退職優遇制度を実施している。
マイコン事業のスパンションへの売却の見通しがたったことで、ある業界関係者は「これで富士通は半導体からほぼ撤退だ」と嘆息した。