総務省によれば、2023年のふるさと納税の寄付額は初めて1兆円の大台を突破した。知名度不足から低迷していた企業版ふるさと納税も470億円と、21年度比で倍増した。連載『橋本卓典の銀行革命』の本稿では、企業版ふるさと納税の「物納」で自治体の課題を解決し、付加価値を創出している地域金融機関の知られざる取り組みを紹介する。(共同通信編集委員 橋本卓典)
地域金融ネットワーク
企業版ふるさと納税は、企業が本社所在地以外の地方公共団体の地方創生事業に寄付した場合、寄付額の最大9割が税控除される仕組みだ。自治体からの返礼品は禁じられている。
2023年11月以降は、政府が物納についてのルールを明確化したことで、「物納寄付にも弾みがついた」と語るのは、全国の地域金融機関と連携して企業版ふるさと納税の仲介を行う、RCGの天間幸生社長だ。
天間氏はみちのく銀行出身。北海道銀行に転籍後、社内公募で誕生した地域商社、北海道総合商事の社長に就任した。地域商社では難しいとされた黒字経営を実現した注目の人物だ。
RCGは19年10月に設立されたが、直後に新型コロナウイルス禍に見舞われた。想定外の事態だったが、RCGは渡航不能となった海外、移動が難しくなった国内の地域商材を結ぶ、販路開拓支援サービスを展開した。さらに、中小企業向け福利厚生サービスとして、地域特産品を集めたカタログ販売事業も拡大してきた。
こうしたRCGの事業展開を可能にしてきたのは、全国の地域金融機関と築いてきた信頼のネットワークであった。
地域金融機関の「目利き」なくして地元企業や特産品の発掘は難しい。企業側も地元金融機関の紹介なくしては、安心してRCGの事業には参画できないのである。
この地域金融ネットワークこそが、企業版ふるさと納税の仲介事業も可能にした。まさにRCGの中核資産である。