ヤマダデンキのトイレの気配りに感心
トイレ問題では、ホームセンターが意外と使いやすい。例えば、自宅近くのカインズホームは多目的トイレのほかに、普通のトイレよりやや広くて、手すりのあるトイレがある。
俺が一番感心したのは、ヤマダデンキLABI東京八重洲の地下売り場のトイレだ。手すりは当然のことながら、紙おむつを捨てるゴミ箱も用意されている。俺はトイレ不信から、出かけるときには大人用の紙おむつをしていくことが多い。おむつには「6回分OK」と書いてあっても、たいてい2~3回分で膨らみ、肌触りも悪くなる。ヤマダデンキの対応は、そうした客まで想定しているように思えた。俺は遠慮なく、取り替えたおむつを持参した消臭袋に入れた後、捨てさせてもらった。本当にありがたかった。
バリアフリーという大旗を高く掲げるなら、とにかく地道にできることから始めてはどうだろうか。例えば、東京都はオリンピック・パラリンピックがあったことから、「ユニバーサルデザインの先進都市」を目指しているそうだ。が、日本人の悪い癖で、ユニバーサルの定義を明確にしないまま言葉が一人歩きし、どんな意味なのか分かりづらくなってしまう。この場合は、交通機関や道路のバリアフリーが、ユニバーサルデザインという言葉の意味になっているようだ。
俺がダイヤモンド社を退職した2017年、スペインを旅行した。セビリア(スペイン語ではシビーリャと聞こえる)という街を歩いていたときのこと。なんだか不思議な感覚にとらわれた。路面電車を含めて石畳の道路に段差がなく、見事なバリアフリーとなっていたのだ。
このレベルに東京が追いつくには、かなりのカネと時間がかかるだろう。しかし、そんなにカネや労力をかけなくても、体の不自由な人が幸せになる方法はあるはずだ。
俺からは、「手すり1本運動」を提案したい。これまで述べてきた通り、手すり1本の気遣いが、健常者が思っている以上に、障害のある人を楽にする。
言わずもがな、日本は超高齢化社会に突入している。目立つ障害がなくても、体が思うように動かない老人はどんどん増えている。一方で彼らはれっきとした消費者であり顧客である。余裕がないという企業や商店も、手すり1本なら取り組みやすいはず。現場の知恵と工夫で、トイレや廊下に手すりを付けてみたらどうだろうか。きっと、意識まで変わるはずだ。
さて、連載の次回は「薬」がテーマの予定だ。が、いかんせん病を抱えながらの執筆なので、毎週更新もなかなかしんどくなってきた。テーマも突然、変える場合があるかもしれない。それでも、読んでくれる人がいる限り、書こうと思う。乞うご期待!
パーキンソン病という名前は、約200年も前に、イギリスのジェームズ・パーキンソン医師が、振戦麻痺(まひ)に関して発表した論文に由来する。パーキンソン病は脳の神経伝達物質であるドパミンが減少することによって起こる。
ドパミンは体をスムーズに動かすために、脳の指令を筋肉に伝える物質(ホルモンの一種)で、脳の中の黒質神経細胞で作られる。この黒質神経細胞が壊れることで、ドパミンの量が減ってしまうのが、パーキンソン病だ。なぜ黒質細胞がより多く死滅するのかについては、まだ明確な原因は特定されていない。
パーキンソン病になると、さまざまな運動障害が出てくる。次の四つが典型的だ。(1)静止時の震え、(2)筋肉が硬くこわばる筋固縮、(3)動きが遅くなる寡動・無動、(4)転びやすくなる姿勢反射障害
パーキンソン病を発症した有名人では、ボクシング・ヘビー級の偉大なチャンピオンだったモハメド・アリがいる。1996年のアトランタ五輪で、震える腕で聖火をかざす姿を思い出す人も多いだろう。また、人気映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの主演を務めたマイケル・J・フォックスは、発症後も俳優の仕事を長年にわたり続けている。
~俺の場合~
静止時の震えは全くなく、筋肉が硬くこわばる筋固縮が症状の中心だった。筋固縮による腰痛にも悩まされていた。それがDBS手術後、全般的に症状は改善し、寝込むこともなくなったものの、姿勢反射障害による転倒がひどくなり、これをどうコントロールするかが目下の課題だ。