大学に行けば選択肢が増える。就職するにしても、好きな仕事、やりたい仕事を選ぶことができる。これもまたよく言われる文言ではありますが、いかがなものでしょうか。

 仕事は無限にあるわけではありませんし、特に大卒程度の知識が必要とされる、社会的に地位の高い、報酬のいい仕事なんていうのは絶対数が少ないのです。大卒のなかの、ごく一部がそのような仕事に就けるだけ、そして、その一部の仕事をめぐって奪い合いがおきる、それが就活です。そして構造上どうやっても、ほとんどの人が負けるのが就活なのです。

 このことはまた別の事実を私たちに教えてくれます。つまり世の中には、大卒程度の知識を必要としない、魅力に欠けた、やりがいのない、社会的地位の低い、低賃金で非正規の、ウーバーイーツの配達員のような、そんな仕事がいっぱいあるということです。

 もうおわかりですよね。

 ご主人様の狙いとは、ひたむきにがんばって大学を卒業した人に、中卒や高卒の仕事、いやもっとはっきり言おう、大学を出た人に「元気な小学生でもできるような仕事をさせる」ことなのです。そんな構造をつくりあげ、多くの若者が自ら進んでそのような仕事を選ぶように誘導し、実際にそれが機能しているのです。

「大学進学」によって
逆に選択肢がなくなる!?

 子どもの頃から、何年もかけ、贅沢したわけでもなく、浪費したわけでもない、真面目に堅実に生きていた人が、返すのが困難なほどの借金を背負わされて、返済のために一時的に自由に生きることを諦めざるをえない。

 大学で勉強した知識をいかした仕事をしたくても、入学と同時に借金ですから、とりあえずは借金を返そう、そのあとで自分の好きなことをやろう、と自分に言い聞かせるしかないのです。

 大学に進学したことによって、選択肢はなくなっているのです。なんでもいいから働くという、たったひとつの選択肢を選ばざるをえなくなってしまっているのです。

 薄々お気づきの方もいらっしゃると思いますが、私自身は大学には合格できず、つまりは学費とも、奨学金とも無縁の人生を送ってきました。そんな私が大学進学や奨学金について語るのは、当事者性のかけらもないみっともないことで、恥ずかしくないのかと言われれば、恥ずかしいです。でもやはり、このまま吹き上がったいきおいで語らせていただきたい、「せっかくだから」です。