すると、その先輩社員は「なぜそこまで会社や仕事や商品が好きなのか」という本人の想いや解釈を語ってくれるので、それが良い情報提供となり、メンバーの願望が明確になるきっかけにもなります。

会社の歴史や商品開発の背景を
大先輩からメンバーに語ってもらう

 願望や目的が曖昧な人は、さまざまなことに感謝の気持ちが持てず、何事も当たり前になっているという場合もあります。そのようなメンバーは、会社の歴史、商品が生まれた背景のストーリーなどにあまり詳しくないことも多いようです。これは情報不足なだけで本人に悪気はありません。

 そうした場合は、長く会社に勤めている大先輩から会社がまだ小さかった頃の話や、自社商品が生まれた誕生秘話、あるいは自社サービスを使って感動してくださったお客様の話などの歴史を語ってもらうことも有効です。

メンバーの適正や才能を理解し
自己実現してほしいことをデザイン

 本人が明確な目的・目標を持てていなくとも、マネジャーはメンバーのことをよく観察し、本人の強みや適性、才能をしっかりと理解します。その上でメンバーがどのような成長を遂げ、どのようにこの会社で自己実現してもらえたら本人にとってもよいかを「デザイン」することが大切です。

 そして、その内容を「期待」として伝えます。

「私にはあなたに期待していることがあるので伝えてもいいかな?」と前置きするのが効果的です。

 面談をして直接伝えるのでもいいですが、整備されているのであれば、社内用SNSやチャットツールなどで文章で伝えてもよいと思います。

書影『部下をもったらいちばん最初に読む本』(アチーブメント出版)『部下をもったらいちばん最初に読む本』(アチーブメント出版)
橋本拓也 著

 私自身の実体験ですが、私も直属の上司や社長から長年「期待」を伝え続けてもらってきました。

「橋本さんは、トレーナーに資質があると思いますよ」

「橋本さんには、将来アチーブメントの看板講師として、お客様の成果の創造に貢献する活躍をしてほしいと期待しています」

 そのように繰り返し伝えられることで、当時はなかった「講師」という仕事やキャリアが徐々に私の願望の中にも描かれていきました。

 このように「良質な情報」と「価値ある体験」が繰り返し与えられると、願望が明確になるのです。これを「願望を育む」と呼んでいます。

 ぜひ実践してみてください。