DOGEコインは「ミームコイン」
可愛らしい柴犬の写真から派生

 そもそも政府効率化省(DOGE)という機関は、現在はまだ存在していません。それだけでなく、今後も連邦の政府機関として位置付けられる予定はありません。あくまで、政府の諮問機関として助言する立場に位置付けられています。

 日本で言えば、かつて昭和の時代にあった、行政の適正・合理化について調査・審議するために旧総理府に設置された諮問機関、「臨時行政調査会」に近いものと言えるでしょう。

 そして、DOGEコインのDOGEとは、トランプ次期政権に関するDepartment of Government Efficiencyの頭文字ではありません。DOGEコインを前から知っている人には周知の事実なのですが、大統領選挙後のマスク氏の動向とごっちゃになって、知らずに勘違いする人も増えていると思います。

 DOGEコインは、2013年に生まれた「ミームコイン」です。ミームとは、インターネット上で人から人への拡散していく文化や行動のことを指します。DOGEコインは、当時人気だった可愛らしい柴犬の写真に、意図的に間違ったスペルの「DOGE」が付いたミームから派生したとされています。

 その目的は、当時の仮想通貨ブームを風刺することだったのです。DOGEコインは、ビットコインをベースに作られていますが、発行上限が設定されていない仮想通貨であり、ビットコインとは違った値動きを見せています。

 このようなDOGEコインに、世界中の注目が集まるきっかけを作ったのがマスク氏です。19年4月にマスク氏がドージコインを「お気に入りの仮想通貨」とツイートした結果、DOGEコインの価格は2倍(0.002ドル→0.004ドル)になりました。

 続いて21年12月には、マスク氏がCEOを務めるテスラが、DOGEコインを決済手段として導入すると発表しました。すると今度は、DOGEコインの価格が0.15ドルから0.21ドルに上がりました。

 さらに23年4月4日、旧Twitterのアプリ左上に表示されるロゴが、青い鳥から柴犬に変わったことがあります。これについてマスク氏は、「約束通り」とつぶやきました。その結果、DOGEコインの価格は約14%、0.09ドルに上昇したのです。

 翌24年1月には、マスク氏が経営するスペースXが「DOGE-1ミッション」を発表。この時も、DOGEコインの価格は0.10ドル→0.15ドルに急騰しています。

 そうして今年11月、米大統領選におけるトランプ氏の勝利を受け、DOGEコイン価格は0.20ドルから上昇。同月25日、冒頭でも述べた通りマスク氏が“匂わせ”を行ったことでさらに急騰している、という流れです。