【諫早高校】華麗なる卒業生人脈!ノーベル賞学者の下村脩、直木賞作家の垣根涼介、脚本家の市川森一…緑色蛍光たんぱく質の発見でノーベル化学賞を受賞した下村脩氏 Photo:Miguel Villagran/gettyimages

垣根涼介と野呂邦暢のほか
文芸で活躍する多くの卒業生

 南西を長崎半島、南東を島原半島に接する諫早(いさはや)市。長崎県の交通の要衝だ。そこにある長崎県立諫早高校は、附属中学校を持つ併設型中高一貫校だ。略称は「諫高(かんこう)」だ。

 小説家の垣根涼介著の『極楽征夷大将軍』が、2023年上期の第169回直木賞に選ばれた。垣根の著作は、17、19年と2回、直木賞候補になっている。すでに05年には山本周五郎賞も受賞しており、垣根は実力作家として順当に評価された、といえるだろう。

 垣根は諫早高校を経て筑波大に進学し、十数年ほどサラリーマン生活を送った後、専業作家になった。推理物を得意としたが、この10年は歴史小説へウイングを広げてきた。

 諫高は、芥川賞作家も出している。1973年下期の第70回で、『草のつるぎ』で受賞した野呂邦暢(くにのぶ)だ。それ以前に4度、芥川賞候補になっていた。

 野呂は、諫高で垣根より29期先輩だ。京大文学部を受験するが失敗し、大学には進学せず陸上自衛隊に入隊した。地方在住の作家として身を立て、昭和時代に、諫早の風土を愛し、豊かな詩情を秘めた端正で強靭な作品を残した。80年に42歳で急逝した。

『草のつるぎ』の直筆原稿は没後に古書店を転々としていたが、14年に県立長崎図書館が購入し所蔵している。

 芥川賞作家と直木賞作家を1人ずつ生んだだけではない。諫早高校はとにかく、文芸の世界で活躍している人物をたくさん出しているのだ。

 野呂の4期後輩には、脚本家・劇作家の市川森一(しんいち)がいた。83年に第1回向田邦子賞を受賞、NHK大河ドラマなど800本以上の脚本を執筆し、テレビ・映画化された作品も多い。代表作に『ウルトラセブン』や『東芝日曜劇場』での脚本がある。

 市川は、諫高から日芸(日大芸術学部)の映画学科に進んだ。日本放送作家協会会長を務めた。11年12月に死去したが、13年には市川森一脚本賞が設立された。

 70年代初めに2作で2回、芥川賞候補になった後藤みな子という小説家も、諫高OGだ。野呂より1年先輩で、活水女子短大英文科卒。30年の沈黙ののち12年に小説を刊行、21年には『高円寺へ』(深夜叢書社)を出版し、注目された。

 小説家の浦野興治は、『諫早思春期』を著した。

 旧制卒の医師で歌人の草野源一郎、新制卒の詩人・坂井信夫、吉田詣子、木下和郎が卒業生だ。

 漫画家では御厨さと美(みくりや・さとみ)がOBだが、22年12月に74歳で死去した。4コマ漫画・少女漫画が得意な津山ちなみがOGだ。