「自分のPRに励む広報」が
増えている本当の理由
確かに、問題の投稿からもそれが伺える。本来、タイミー広報としてのSNS投稿は、「ガイアの夜明け」のオンエアを告知だけで十分だ。「IPO前から仕込んでいた」などという情報は、企業PR的に明らかに蛇足だ。
しかし、まず最初の第一声でそれが入っている。ということは、自分がタイミーのIPO以前から長きにわたって、テレ東のスタッフらに自社に魅力を伝えて、番組企画立案に協力をして、取材も全面的にバックアップをしてきたという「私のこれまでの努力と功績」もしっかりと発信したい――という思いが強かった、というのは容易に想像できる。
つまり、こちらの「SNS誤爆」に関しても、兵庫のPR会社社長と同様に「承認欲求が抑えられなかった」がゆえに引き起こされてしまった可能性があるのだ。
もちろん、広報・PR業界はそんな人ばかりではない。ほとんど人は裏方に徹して自社の魅力や、製品・サービスの優位性を伝えることだけに全力を注いでいる。その一方でこれまで見てきた二人のように、「SNSの運用は私がやりました」「実は裏で仕込んだのは私です」という感じで「自分のPR」に力を注ぐ人も近年かなり増えてきたのも事実だ。
なぜそんなことになっているのか。常に「いいね」を欲しがるSNS社会の弊害、会社よりも「個」を重視するようになった…などなどいろいろな意見があるだろう。
ただ、報道対策アドバイザーとしてこの15年ほど、さまざまな企業・団体の広報・PR担当者とお仕事をさせていただいてきた立場からの率直な感想を言うと、「根本的な原因」はこれに尽きる。
《日本社会の広報・PR軽視カルチャーへの不満が、モンスター広報を生み出している》
会社員の方ならばなんとなくわかるだろうが、会社の中で広報・PRという部門は発言力・存在感が小さい。営業・製造・マーケティングなど稼ぎを生み出すプロフィットセンターと異なり、コストセンターなので、なるべく低い費用、少ない人材で運営されるのが理想という考えがあるからだ。