実際、筆者も危機管理広報やメディアトレーニング講師で呼ばれると、総務部や経営企画が兼任をしていて、専任の広報担当者がいない会社も少なくない。つまり、日本において広報やPRというのは「本業のある人の片手間の仕事」という扱いなのだ。

 このような「広報軽視」のカルチャーの源流がどこからきているかというと、政治だ。

 例えば、21年の自民党総裁選に出馬して敗れた河野太郎氏がその後、自民党広報本部長に就任したことをマスコミはこぞって「冷や飯人事」「島流し」と揶揄した。

 今回の石破内閣で内閣広報官になった外務省の小林麻紀氏も、過去に東京オリパラ競技大会組織委員会広報局長や大臣官房報道官の経験はあるが、それらはあくまで、マレーシア日本大使館、中南米局、欧州局という外務省キャリアとしての「本業」のかたわらで、こういう経験もあった方がいいという感じで任される腰掛け的なポストなのだ。

「ま、政府の広報官・報道官なんてそんなもんじゃないの?」と思う人もいるだろうが、実はそういう「広報軽視」の国のほうが珍しい。

 日本では広報・PRといえば、マスコミ対応くらいのイメージだろうが、実は世界では「パブリック・リレーション」(社会との関係構築を目的とした活動)を意味する。そのため、民主主義国家では非常に重要視されており、政府の広報官・報道官は広報のプロ、あるいは広報として実績のある人が抜擢されるのが常だ。

 例えば、ドナルド・トランプ氏は大統領に就任したら、ホワイトハウスの報道官にキャロライン・レビット氏を起用すると明らかにしている。この人は27歳で史上最年少の報道官になるということだが、なぜこんな大抜擢がなされたのかというと、今回の大統領選で、トランプ陣営の広報を担当していたからだ。

 このような日本の「広報軽視」の現状に不満と憤りを感じている広報・PRの方は多い。特に海外の大学でPRなどを学ばれてきた方や海外の企業で働いていた人は尚更だ。