ヤクルトスワローズのレジェンド・青木宣親は二軍時代、バッティングの技術向上に四苦八苦していた。そのときに出会ったのが、名捕手にして名監督・野村克也の著書『野村ノート』。試行錯誤の結果、青木はプロ2年目にしてシーズン200安打を達成した。ヤクルトファンのミュージシャンであり作家の尾崎世界観が、青木宣親と「技術」について語り合う。本稿は、青木宣親・尾崎世界観『青木世界観』(文藝春秋)の一部を抜粋・編集したものです。
バッターを4つのタイプに
分類した野村克也監督
尾崎 青木さんは「どんなボールでもバットに当てることができるのは自分の才能」と言っていた。では、その才能をどうやってバッティングの技術へと昇華させてきたのだろう。涼しい顔でヒットを積み重ねていたあの日々、何に心血を注ぎ、何を突き詰めていたのか。ずっとそれが気になっていた。
青木 プロ1年目、自分がまだ二軍時代に「野村ノート」を読んだんです。ヤクルトの監督も務められた野村克也さんの本で、そこにはキャッチャー目線から見たバッターの分類について書かれていた。
野村さんは、基本的にバッターは4つのタイプに分類されるとしていました。
(A型) 特にヤマを張らず、直球に重点を置きながら変化球にも対応しようとするタイプ
(B型) 内角球か外角球か、狙う球のコースをどちらかに絞り込むタイプ
(C型) 打つ方向を、右方向か左方向かに決めるタイプ
(D型) 直球か変化球か、球種にヤマを張るタイプ
僕はこれを読んだ時に、「自分はどれだろう?」とか「こういうタイプを目指していこう」ということではなく、「ということは、この4つを全てできるようになったらバッテリーは対応できなくなるんじゃないかな」と考えたんです。その日から、この4つを全てできるように、と考えながら練習に取り組みました。幸い1年目はファームで過ごしたので、バッティングに向き合う時間はたっぷりと取れたんです。
最も苦労したのが
ライト方向へ打つこと
僕は基本的に大学時代までは、(C型)ならばできるかな、というバッターでした。打つ方向を決める。といっても、右には打てなかったんですよ。引っ張りはできなくて、逆方向にしか打つことができなかった。
まず最初に、バッティングの基本である(A型)に対応できるようにすることから始めました。基本的にストレートを待ちながら、変化球にも対応する。対応できる幅というのは広ければ広い方が一流になれる可能性が高いわけですから、相手ピッチャーを知り、カウントごとに投げる球種の確率はどう変わっていくかということも理解しながら対応できるようになりました。