「真の被害者を保護し、法律の悪用を狙う者をふるいにかけるためにも、被害者認定は慎重に行っている」
各種のSNSに偽のプロフィールを書き込んで被害者をだますのは詐欺師の常套手段だ。しかしピタニラブートに言わせると、いくら警告してもSNS運営会社はまともに対応していない。
この点について問い合わせたところ、フェイスブックの親会社メタは本誌に、詐欺行為の摘発についてはタイ警察と緊密に協力していると回答してきた。
今年4月から7月までに偽のアカウント12億件とスパムメッセージ3億2200万件を削除しているし、タイ国内のデジタル・リテラシー推進団体とも協力してサイバー詐欺被害を回避するための支援を提供しているという。なおグーグルからの回答は得られなかった。
いずれにせよ、こうした犯罪グループが「世界中で増殖するのは必至」だとピタニラブートは言う。なにしろ「すごい金額を稼げる」からだ。「実際、既にサイバー詐欺の稼ぎは麻薬の密売で得られる利益を上回っているかもしれない」
タイ警察の当局者によれば、この5年間でサイバー詐欺に関するアメリカの司法当局からの捜査協力要請は飛躍的に増えた。
アメリカ人被害者の預金が国内外の銀行口座からタイに送金されたロマンス詐欺の事例や、ランサムウエアにやられたアメリカ人の払った身代金がタイの仮想通貨取引所を経由して処理された事例も確認されている。
「豚の屠殺」の被害総額
「豚の屠殺」と呼ばれる詐欺の手口もある。豚を思い切り肥育してから屠殺するのと同様、うまい投資話を装って被害者に限界まで金を出させ、挙げ句に行方をくらます手法だ。
被害者は自分の出した資金が増えていると信じているが、実際には投資など行われておらず、複雑なスキームを通じて資金洗浄が行われ、どこかへ消えているだけだ。