化学サバイバル!#3Photo:JIJI

これまで三菱ケミカルグループと住友化学という二大総合化学の収益に貢献しているとして、グループ内部で大切にされてきた田辺三菱製薬、住友ファーマが揺れている。親会社である三菱ケミカルグループ、住友化学が共に、グループからの切り離しも辞さない姿勢を示しているのだ。本業である化学に経営資源を厚く投じなければならなくなる中、両社にとって傘下に製薬会社を持つのが重たくなってきていることに加え、田辺三菱、住友ファーマとも次の成長が見えないこともある。だが、事業売却を図ろうとしても買い手は乏しい。半面、市場は「切り離せ」との大合唱で、かじ取りが難しい局面に立たされている。投資ファンドの名前がちらつく中で両社はどんな決断を下すのか。特集『化学サバイバル!』の#3では、2社の苦悩の裏側を探った。(医薬経済ONLINE 吉水 暁)

化学とのシナジーはなかった
ベストオーナーは別にいる

 かつてはグループを支える収益源としてもてはやされていた医薬品が一転、どうして距離を置かれることになったのだろうか――。化学メーカー傘下にある製薬会社の社員の気持ちは、きっとこのようなものだろう。その代表例が、田辺三菱製薬と住友ファーマ。いずれも財閥系の三菱ケミカルグループと住友化学が親会社だ。市況価格に左右され、業績が上下しがちな化学とは異なり、製薬・ライフサイエンスは安定的に稼げるとして頼りにされてきたのがこれまで。しかし、今では「完全子会社化したが化学とのシナジーが見えなくなってきた」(筑本学社長)という三菱ケミカルG、「医薬品の目利き・開発力で化学企業の貢献は限界」(岩田圭一社長)という住友化学共に売却も選択肢から排除しない“ベストパートナー”“ベストオーナー”探しに乗り出している。

 次ページでは、三菱ケミカルGと住友化学がファーマの切り離しに乗り出した背景を解説する。また、田辺三菱の先行きを左右すると業界で注目されるキーマンの存在に加え、追い詰められた田辺三菱と住友ファーマの売り先の候補や、背後にちらつくファンドの影を探る。