化学サバイバル!#15Photo:photolibrary

中国の化学品の過剰生産による市況低迷で低稼働率にあえぐ化学メーカーは、大胆な事業構造改革や伝統的な化学品事業からの撤退、半導体材料事業への経営資源シフト、脱炭素が必須のコンビナートのエチレン製造設備停止などに動いている。課題が山積する中で、問われているのが各社のリーダーの手腕だ。では、各社はどんなトップを起用してこの難局を乗り越えようとしているのか。特集『化学サバイバル!』の♯15では、主な化学メーカーのトップ人事の行方を占う。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)

三菱ケミカル復活なら長期政権?
住友化学にトップ交代の観測も

 化学最大手の三菱ケミカルグループは、前任の外国人社長時代に経営が混乱し、2024年4月に筑本学氏が後を襲った。筑本氏は大手化学メーカーではいまや数少ない化学畑の出身でもある。

 同社は筑本氏の主導で、傘下の田辺三菱製薬のベストパートナー探しや、低稼働に悩む石油化学コンビナートの再編といった構造改革を加速させている。24年11月に公表した長期ビジョンでは、35年のコア営業利益を今期予想の10倍に当たる5500億円に伸ばす方針を打ち出した。

 長期ビジョンの達成には現状では不透明な面があるものの、祖業である化学重視という筑本カラーを鮮明にしている。筑本氏は「1年で種まきし、3年目で収穫したい」と公言しており、業界内では「3年後にV字回復を果たせば長期政権になる」との見方がある。

 24年3月期に医薬品子会社、住友ファーマとサウジアラビアの巨大石油化学事業ペトロ・ラービグの業績悪化で3000億円を超える過去最大の最終赤字に陥った住友化学。岩田圭一社長は19年4月の就任から6年目に突入する。

 化学業界では「トップ交代は6年」を慣例とするメーカーが多いことに加え、会長の十倉雅和氏が今年5月に経団連会長を退任するのを機に体制刷新があるとの観測も出るが、実は同社の今回のトップ人事はそれほど単純ではないようだ。

 次ページでは、住友化学の次期トップの有力候補の実名に加え、社長交代が起きそうなタイミングを明らかにする。また、三井化学の次期トップ候補を予想するほか、6年任期の慣例に従い近くトップ交代の発表がありそうなUBEと三菱ガス化学の次期社長候補の実名も明らかにしていく。