投げ銭の潜在市場規模は3100億円超
Z世代の3~4割は推しにお金を使う
「ファンが応援をしないと推しが活躍することができない」という“システム”は、多くの市場で導入されるようになり、新人アイドル発掘を目的としたオーディション番組では総じて、視聴者投票の人気順でメンバーの当落がなされている。
若者から絶大な支持を受けた「PRODUCE 101 JAPAN」や「Girls Planet 999」といった 番組においても、参加者の大半は元々視聴者と何ら変わらない素人の若者であった。そのため、視聴者との心理的距離が近く、視聴者は友人やクラスメイトを応援する感覚でオーディション参加者を応援できた。
こういった応援消費は「親近感消費」とも呼ばれ、特にZ世代を中心に牽引されてきた。有名人やキャラクター等を応援する活動にお金を使う人の割合は、10歳代後半で42.1%、20歳代で31.8%であり、他の年代に比べて高い[図表7-5]。
廣瀬 涼 著
Z世代は、社会貢献意識が高いことから、応援したいと感じるものを消費する傾向がある。ここでいう「応援」には、SNSで応援したい対象の情報を拡散する、動画配信アプリで投げ銭をする(お金やお金に換金することができるアイテムなどを配信者へ送るシステム)、クラウドファンディングに参加するなども含まれるだろう。
Fintertechの「投げ銭市場調査」(2021年12月10日)によると、創作物やスポーツを対象とした投げ銭サービスの国内の潜在市場規模は3100億円を超えており、男女ともに10~20代の熱心な消費が注目されている。このような「他人のために何かしたい」という若者の共闘・応援の心理は、自身の投票が参加者の夢を叶えるための助けになるオーディション番組のシステムと親和性が高い。若者の「推す」という消費者心理にマッチしたものといえる。
推しとファンは強いロイヤリティで結ばれ、推しを応援することは、自身の欲求を満たすことにつながる。推しを応援すればするほどのめり込んでいき、それにより得られる快楽や高揚感は大きくなっていく。推しを応援することは、ファンにとっても、推しにとってもウェルビーイングなことなのである。