確かに責任を持って自分の学習を進めていった子どもにとって、従来の学校に移った際に、テストで評価が決まる、言われたことだけをやる、自分のペースで進めないということに最初はむずかしさを覚えることもあります。
しかし、モンテッソーリ教育の長期的な影響を調査した研究(3)によると、モンテッソーリ教育を受けた子どもたちは大人になってからも、暗記ではなく分析・理解・議論をして学ぶことの大切さを重んじていたり、自分の情報収集能力に自信があったり、自己学習ならびに協働学習により価値を置いたりするなど、生涯学習に必要なスキルを身につけているケースが多いことがわかっています。
子どもたちが学校に行くそもそもの目的は、ただテストで高得点を取ったり、先生から高評価を得たりすることではありません。
仲間との関わりを通して、自分のやりたいこと・得意なことを見つけ、それを追求するために必要なスキルを身につける。そのために多種多様な価値観・学びの分野を提供し、子どもの世界観を広げる手助けをするのが教育のそもそもの目的です。
教育の本来の意味を考えると、従来の教育システムに子どもを合わせることにこそ、私たちは矛盾を感じるべきでしょう。
「天才教育」ではない
才能を引き出すお手伝い
アップルの創業者スティーブ・ジョブズ、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス、グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、藤井聡太名人など、著名人がモンテッソーリ教育を受けたということもあり、モンテッソーリ教育=「天才教育」といったイメージが少なからずあります。
しかし、モンテッソーリ教育は、天才を育てる教育でも、エリートを育てる教育でも、受験のための教育でもありません。
「教育(education)」は、ラテン語でそもそも「引き出す」という意味があります。
子どもが本来持っている才能を引き出し、一人ひとりが自分の強みを生かしながら、自分の社会でのあり方を見つけていく。そんな市民としての土台作りのお手伝いをするのが、モンテッソーリ教育です。
(3) Glenn, C. M. (2003). The Longitudinal Assessment Study (LAS): Eighteen Year Follow-Up. Final report