陽の光を浴びると、これら時計遺伝子が活性化されてタンパク質が作られ、そのタンパク質の量が周期的に増減することで、私たちの体のリズムを生み出しているのです(図1)。

図表1:光によって時計遺伝子の位相がずれる体内時計は約25時間のリズムがあるが、早朝に太陽の光を浴びることで位相が1時間早まり、24時間に調節される(講談社ブルーバックス『「腸と脳」の科学』より転載)
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 一方、時計遺伝子(図1の場合、Per1遺伝子)の活性化の上昇期(早朝)に起きて早朝の陽の光を浴びると、時計の位相が前へ進みます。一方、タンパク質が産生されるというリズムの降下期(夜間の前半)で起きて光を浴びると、時計の位相が後ろへずれます。つまり、夜に強い光を浴びてしまうと、タンパク質が産生されるリズムが変化し、その結果、中枢時計が狂ってしまうのです。

 さて、ここまでの説明では、まだ睡眠と腸には何の関係もなさそうだと思われるかもしれませんが、ここから少しずつ腸とのつながりを紐解いていきます。

 時計遺伝子は全身のさまざまな細胞にも存在するとお話ししましたが、同じように、概日リズムも心臓や肝臓、さらには脂肪細胞や筋肉など全身に存在しています。そのため、肝臓や腎臓などの末梢臓器にも、それぞれに末梢時計と呼ばれる概日時計が存在するのです。代謝やイオン濃度の調節など、それぞれの臓器に特有の機能を制御しています。

 末梢時計は全身の臓器にいくつも存在するので、各臓器の時計の時刻がずれないよう、視交叉上核の中枢時計が全身の時刻合わせをする役割を担っているというわけです。

食事の刺激が体内時計に
影響をおよぼしている

 中枢時計は、光の刺激によって時刻合わせを行います。光刺激をきっかけに、ホルモンや神経伝達物質などを介して、中枢時計と末梢時計の時刻を合わせるのです。