御年103歳で一人暮らしをしている石井哲代おばあちゃん。新聞の連載で一躍有名になった哲代おばあちゃんは「自分のできることは自分で」とこれまで気丈に生活を続けてきたが、100歳を超え、少し生活や心境にも変化が出てきたという。できないことが増えても、笑顔を絶やさず前向きに生きる哲代おばあちゃんのひとり時間の楽しみ方とは?※本稿は、石井哲代・中国新聞社『103歳、名言だらけ。なーんちゃって 哲代おばあちゃんの長う生きてきたからわかること』(文藝春秋)の一部を抜粋・編集したものです。
「自分のできることは自分で」
そう思っていたけど……
わたくし、石井哲代と申します。100歳のおばあさんでございます。え、違う?さばを読んどりました、103歳じゃそうでございます。広島県尾道市の田舎の集落で、何とかかんとか一人暮らしをしております。
昨年(2023年)、私の暮らしぶりをまとめた本を出していただいたんです。するとまあ、有名人になってしまいました。「ファンになりました」なーんてお手紙をいただいたりして。この年で全国に知り合いができたようで、うれしゅうてね。こがあな年寄りの話、何が面白いんかよう分からんのですが、すっかり気を良くしておるんでございます。
すると今度は2冊目を出すというじゃありませんか。わおーわおー、びっくらでございます。中国新聞の記者さんが、飽きもせずにうちに通ってくださってなあ。この1年で聞き取ったことをまとめてくださるんだそうです。
思い返せばいろいろありました。例えば去年の冬、わが家の台所にエアコンがやってきたの。運動のつもりでストーブの灯油を自分で入れては暖をとっておったんですが、「火の元が心配だから」って姪たちが取り付けてくれました。
ガスレンジも電気のヒーターに取り替えたんです。デイサービスに行ったら髪の毛が焦げとるって言われてねえ。自分じゃあそんな覚えはないんじゃけど、みんながガスもストーブも危ないって。一気に文明開化です。
おばあさんの1年は、若いみなさんの何年分かに当たるのかもしれませんなあ。100歳のころは「自分のできることは自分で」なんて息巻いておったんですが、いよいよできることが少のうなってきました。自分の中で起きておる変化の大きさに、さすがの哲代さんも気落ちすることがあります。のんきじゃないんでございますよ、わたくしだって本当はね。
じゃがね、自分を認めてあげるしかないんですね。後ろ向きな気持ちを受け流したり、隠したりすることを覚えながら、らくな気持ちでおること。長う生きてきた集大成が今の自分です。
しょんぼりしよったら、人生を否定したみたいになりますね。心だけは柔らこうにして、おばあさんはいつも機嫌よう過ごしていたいです。なーんちゃって。