自然災害から犯罪まで、子どもは日々、あらゆる危険に遭遇する。そうした危険から身を守る方法を紹介した書籍が池上彰総監修『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)だ。
何が起こるかわからない人生、万一への備えが運命を左右することもある。本書は、すべての親子にとって必読の一冊だ。
今回は『いのちをまもる図鑑』の刊行を記念して、著者の滝乃みわこ氏とイラストエッセイスト犬山紙子氏の対談を行った。犬山紙子氏は『女の子が生まれたこと、後悔してほしくないから』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を発刊したばかり。ともに「子どもを守る」ことを徹底的に考え抜いて書かれた両書の著者に、その重要性について語り尽くしてもらった。
(構成/ダイヤモンド社・金井弓子)
子どもが「知る」ための第一歩
犬山紙子(以下、犬山):『いのちをまもる図鑑』は1冊で、子どもたちがまず「知る」ことができるというのが素晴らしいと思います。もっと知りたいと思ったときには、他の書籍や情報にもつながるような作りになっているのもいいですね。あとは、わたしが児童虐待防止の活動をしていることもあって、虐待されている子どもたちへの目線がしっかり入っているのが、とてもありがたいなと感じました。
滝乃みわこ(以下、滝乃):ありがとうございます。わたしは専門家ではないのですが、取材を進めていく中で大事にしたかった部分ですね。
犬山:「親に虐待されている場合、100%悪いのは親」と言い切ってくれていて嬉しかったですね。虐待されている子どもは「自分が悪いから親が怒るんだ」と思い込みがちなので、「そうじゃないよ」というメッセージをまず届けることが本当に大事だと思います。
滝乃:ありがたいことに、「加害者が100%悪い」については「言い切っているのが良い」という声が多いですね。やっぱり理不尽な被害にあった人でも自分を責めてしまうんだと思います。
「これって虐待なの?」と気づくきっかけ
犬山:子どもの権利をわかりやすく説明してくれていて、さらに「虐待されているか」がわかるチェックリストがついているのも素晴らしいです。自分が虐待を受けていると気づいていない子も多いと思うんです。「これって虐待なの?」「しょうがないことだと思ってたけど…」と気づくきっかけになるのが、この本だと思います。
滝乃:虐待だけでなくヤングケアラーの問題も同じで、子どもたちは、自分が置かれている状況を他と比較できないので、それが普通だと思ってしまいがちですよね。
犬山:そうなんです。子どもの世界って、家と学校だけで完結してしまうことが多いので、外の世界を知らずに「これが当たり前」と思い込んでしまう。
被害者が自分を責めてしまう心理
滝乃:性被害に遭った場合も同じですよね…。被害者が罪悪感を持たないように、「あなたは悪くない」というメッセージをしっかり伝えることを意識しました。以前ギリシャで夫と一緒に強盗に遭ったことがあるんです。地下鉄の中で大勢に囲まれて、怒鳴られながらカバンを引っ張られたんですが、なんとか次の駅で逃げ出して博物館に駆け込みました。幸い無事だったんですが、その夜は「地下鉄なんかに乗ったから…」「油断していたから…」と、2人とも自分を責める気持ちがずっと消えなくて。
犬山:いやいや、ぜんぜん悪くないじゃないですか!
滝乃:そう、100%自分は悪くないはずなのに、2人ともその日1日ずっと落ち込んで、次の日にようやく「いや、おかしいぞ、うちら悪くないじゃん」と気づきました。でも、こうして無事だったとしても、2人だったとしても、怖い目にあったら自分を責めてしまう。それを思うと、1人でもっと大きな被害に遭った場合は、自分をどれだけ責めてしまうんだろうって想像すると、やりきれないですよね。