2024年1月1日に発生した能登半島地震から1年が経つ。南海トラフ地震や首都直下地震など巨大地震の脅威も去らぬ中、断片的な防災知識ではなく最先端の科学技術や専門家の知見に基づいた正しい防災知識を身につけたいと考える人も多いのではないだろうか。
本記事では、池上彰総監修『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)で第2章「自然・災害からいのちを守る」の監修を務めた危機管理の専門家・国崎信江氏に「アップデートすべき防災知識」を聞いた。
家で過ごす時間が増える年始、防災対策を見直してみては?(取材・構成/杉本透子)

【地震に備える】子どもがひとりで被災!親が伝えておくべき3つのことPhoto: Adobe Stock

「ひとりで被災すること」を最も恐れているのは子ども自身

――子どもがひとりで登下校しているときや、習い事に行っているときに被災することもあると思います。保護者としてはどんなことを伝えておけばよいでしょうか?

国崎信江氏(以下、国崎):子どもを対象とした防災教育の講座で「地震がきたときに1番嫌なシチュエーションは?」と聞くと、「親と離れてひとりでいるとき」と答えた子がとても多かったです。それだけ子ども自身が不安を感じているということですね。

――そんなに不安に思っているんですね。

「地震がきたらどうする?」を親子で話し合う

国崎:だから、日頃から親子の会話の中で「もしここで地震が起きたらどうする?」というのは話し合っておくといいと思います。例えば登下校中に地震が起きたときに通学路の中で一時避難できる場所はどこなのか。「公園」「コンビニエンスストア」「駐車場」など、さっと身を寄せられる場所を多く見つけておきましょう。そして揺れが落ち着いたら避難所やグラウンドなどより安全な場所へ移動するなど行動を話し合っておきましょう。

『いのちをまもる図鑑』では、地震が起きた場合に安全な場所・危険な場所について図解している。『いのちをまもる図鑑』では、地震が起きた場合に安全な場所・危険な場所について図解している イラスト:五月女ケイ子
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大きな地震が起きると上から色々なモノが落ちてくるので、ランドセルやお稽古バッグなど持っているカバンで頭を守ることも併せて伝えていただきたいです。

――具体的な避難場所を確認しておくことは大切ですね。

困った時に「頼れる大人」を探せるようにする

国崎:「頼れる大人」についても伝えておくとよいと思います。例えば道でも駅でも、子どもを連れている保護者を見かけたら「一緒に逃げてください」「一緒に行動していいですか?」と、子供自ら勇気を出して声を掛けられるようにしておくのです。なぜなら子どもは持っている知識が少なく、経験も少ない中で正しい判断ができるとは限りません。1人で行動するより、子どもと一緒にいる大人に声を掛けられるといいと思います。

もちろんご近所でよく知っている人であればなお安心です。マンションであれば「〇階の〇〇さんを頼りなさい」とか、一軒家であれば「隣の家の〇〇さん頼りなさい」とかね。親も子供を守れるようにご近所さんと親しくして「何かあったらうちの子をよろしくお願いします」とお願いできる関係をつくっておきましょう。

――近所の人と挨拶をしておく、関係を作っておくというのは、防災にもつながるということなんですね。

書籍などで「過去の事例」を学んでおく

国崎:そうですね。あとは子どもが自分自身で身を守る行動を取れるようになるには、これまでの震災で何が起きたかを知ることも大事です。道路が地割れするというのはどういうことなのか、ブロック塀はどうやって崩れてくるのか、マンホールがせり上がるとどうなるのか。具体的に知ることで、自分の街が大地震でどのようになるかを想像して学ぶわけです。

『いのちをまもる図鑑』のような書籍や漫画を親子で読むのもいいですし、映像を見て親子で話すのも、防災センターで体験型で学ぶのもいいと思います。お子さんによっては大きなショックを受けることも考えられますので、お子さんの年齢や性格を考慮しながら多様なアプローチで学んでほしいと思います。

※本稿は、『いのちをまもる図鑑』についての書き下ろしインタビュー記事です。

『いのちをまもる図鑑』第2章監修者
国崎信江(くにざき・のぶえ)

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表
女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センター)などの監修もつとめる。