エビデンスに基づく
花王の健康経営

 健康経営の具体的施策はどのようなものか。一例として、24年健康経営銘柄に選定された花王(通算9回選定)を紹介しよう。

 花王の健康経営の主な特徴は①トップからの意思表明②健康づくりを推進する体制の組織化③データ分析に基づく計画・実践・検証・改善(PDCA)④自社技術を活用した健康づくり、と体系的なことだ。

 16年前の08年に「花王では、会社と健康保険組合が協働で社員と家族の健康支援に取り組む」と明記した「花王グループ健康宣言」を経営トップが発表した。

 生活習慣病、メンタルヘルス、禁煙、がん、女性の健康、シニアの健康を重点6項目としている。
全国の主要拠点に健康相談室を設け、健康実務責任者を置き、産業医、看護職と協働して健康指導を行う体制を整えている。

「従業員の健康は、地域性や職種によって傾向が違う。例えば営業職は食生活の乱れなどからメタボ傾向にあり健康診断の数値に問題が多いがストレスは少なく、研究員は比較的健康だがストレス値が高い傾向にある。そこで事業拠点ごとに従業員に適した健康指導を行っている」と健康経営を推進する人財戦略部門健康開発推進部長の守谷祐子氏は話す。

 具体的な取り組みに「GENKI-well」がある。ヘルスケア実践支援活動として企業や自治体などに提供するサービスを、自社の従業員と家族の健康指導にも活用する。長年の研究開発で蓄積したエビデンスに基づいた健康ソリューションを用いているのだ。

「健康増進をするために必要なのは、行動変容を促すこと。そのためには数値を測る。健康を見える化し、動機付けして、暮らしの中で無理なく改善をしてもらうことが大切。測定と改善のための施策がセットで効果を発揮する」と守谷氏は説明する。