かつてカメラとフィルムの製造販売で支配的な地位にあったコダックも有名です。1970年代にはフィルム市場の90%、カメラ市場の85%を占めた同社でしたが、デジタルカメラの普及に早期から適応することができず、技術の陳腐化に伴って2012年に倒産に追い込まれました。
しかも、コダックは実はソニーよりも前に世界初のデジタルカメラの試作機を製造していたにもかかわらず、フィルム販売や写真の現像サービスで巨額を稼ぐ古いビジネスモデルから離れることができなかったと言われています。
このことは、適応がいかに重要でありながら困難なチャレンジであるかを示唆していると言えるでしょう。
変化の激しい現代のビジネス環境において組織が直面する様々な問題に、どのように対応する必要があるのか。ここにも「適応」の視点を取り入れる必要があります。
ハーバード大学ケネディスクール公共政策大学院で39年間にわたりリーダーシップを教え、ハーバード卒業生の「最も影響を受けた授業」に選出されたロナルド・ハイフェッツ教授は、我々が直面する問題を、技術的問題(Technical Problem)と適応課題(Adaptive Challenge)に分けて議論しています。
「技術的問題」と「適応課題」
その具体的な中身とは?
ハイフェッツ教授によれば、「技術的問題」とは問題自体が明確であり、それを解消するための答えや解決法も明らかであるものを指します。これらの問題はその分野の専門家が専門知識をもって診断し、既に確立されている解決法を授けることで基本的には解消されていきます。
これに対し「適応課題」は、問題の所在自体が必ずしも明らかではなく、既存の方法で解決ができない複雑な問題のことを指します。当事者同士で対話しながら「どうもこれが問題だ」と模索していかなければなりません。また、ただ1つの正解や既存の解決策は存在せず、かつ、その実行に際しては、当事者の考え方や価値観、習慣、優先順位等を根本的に変化させていく必要が生じます。