ビジネスパーソンのシルエット写真はイメージです Photo:PIXTA

現代のビジネス環境では、変化への適応が企業の存続を左右する。しかし、多くの組織は事業の成熟期や衰退期への対応を後回しにし、技術的な解決策に頼りがちだ。成功する企業は、複雑な課題を解決する適応力を鍛え、柔軟な思考でイノベーションを推進している。あなたの組織でも、環境の変化に合わせた行動を考える時期ではないだろうか?※本稿は、黒川公晴『ミネルバ式 最先端リーダーシップ 不確実な時代に成果を出し続けるリーダーの18の思考習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

「適応」しないと生き残れない
衰退期は必ず存在する

 企業は適応しないと生き残ることができません。図1-1は、事業の典型的な成長と衰退の推移をS字曲線で示す、いわゆる「プロダクト・ライフ・サイクル(PLC)」モデルです。

 PLCによれば、あらゆる製品・サービスや技術は、成長の初期段階から成熟期、そして最終的な衰退期を迎えることになります(当然、成長期を迎えず廃業する事業も多く存在します)。

図1-1:プロダクト・ライフ・サイクル同書より転載 拡大画像表示

●導入期:製品の認知度が低く、売上は少ない。投資が必要なため利益も少ない。
●成長期:市場で広く受け入れられ、需要が急増し、売上が伸びる。同時に競合も増え始める。
●成熟期:市場の飽和や技術の陳腐化により、成長が鈍化し始める。新規顧客の獲得が難しくなり、売上の増加が頭打ちする。
●衰退期:売上が減少。コストは変わらないため利益も減少する。競合は淘汰され、一定の企業のみが残るか撤退する。

 企業は、成長期において仮に事業が順調に伸びているときでも、やがて来る成熟期~衰退期を見据え、市場の環境変化を敏感に捉えながらコスト削減や新たな成長機会を模索するか、イノベーションによって新たなS字曲線を開始する必要があります。これに失敗した企業は数知れません。

変化に適応できない企業の末路
成功と破滅の分岐点とは

 たとえば米国のブロックバスター社は、Netflixの台頭の裏で適応に失敗し、廃業に追い込まれた有名な事例です。

 私が学生時代、アメリカに留学をしていた2000年代初頭、ブロックバスターは店舗型のDVDレンタルショップを米国全土に展開する業界最大手でした。レンタルDVDといえばブロックバスターで、ピーク時には9000店舗にも上る展開ぶりでしたが、Netflixをはじめとするストリーミングサービスの潮流に適時に適応することができず業績は急速に悪化、2010年に破産申請を行っています。