変革を導く適応力とは
リーダーに必要な視点

「人」は「モノ」ではありません。様々な過去の成功・失敗体験があり、そこから形成される様々な価値観、バイアスを有しています。

 そして、そのような内的なメカニズムこそがそれぞれの行動に影響し、「予定」した解決策を歪めていくのです。組織が直面したことのない問題に対峙し、これまで運用したことのない手法を用いて対処していくためには、当事者のこうした内的メカニズムまで丁寧に扱う必要があります。

 皮肉なことに、組織が困難な問題に直面すればするほど、「何とかしてくれ」「打開策を見つけてくれ」というような技術的解決を求めるプレッシャーはリーダーにのしかかります

 そして多くの場合においてリーダーは、皆の期待とプレッシャーに応える形で、「変革」という名のもと大きな一手を打ちます。ここで当事者たちの適応行為をサポートしない形で実行が進むと、「なんか新しいことやったけど結局何も変わらなかったね」という残念な、しかしよく聞かれる結末を生んでいくわけです。

 組織運営を担う当事者として、「私たちが対処しようとしている多くの課題は、技術的問題のように一筋縄ではいかず、適応を要するのだ」ということを十分に認識するのが、重要なスタートと言えるでしょう。

 様々な変化は、企業にとって新たな機会と存亡の危機を同時にもたらします。組織は、集団としての学習力・適応力を高め、既存のビジネスモデルや組織運営のあり方を不断に再考し続ける必要があるのです。

 それは、変化の兆しを察知するとともにその課題の本質を理解し、必要な自己変容を組織自ら遂げる能力とも言い換えられるでしょう。

 そのなかでリーダーは、前例にとらわれない柔軟な思考を持たなければなりません。素早く決め、チームの適応を助けながら素早く実行し、誤っていれば素早く軌道修正する迅速性や強靭性を発揮しなくてはなりません。

 さらに、個人としてこうした能力を発揮するだけではなく、同僚や部下の適応行為が自発的に行われやすい土壌を作り出すために、日々影響力を行使しなければなりません。

 これが本記事のテーマとする「適応型リーダーシップ」です。