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組織の存在意義を定義する「パーパス経営」が注目を集めている。変化が激しい時代において、パーパスは従業員の連帯を高め、意思決定を迅速化するだけでなく、イノベーションや持続可能な成長を促進する。あなたの組織も、社会的使命を明確に示すことで、未来への競争力を築けるかもしれない。※本稿は、黒川公晴『ミネルバ式 最先端リーダーシップ 不確実な時代に成果を出し続けるリーダーの18の思考習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

果たすべき使命を表す
企業や組織の「パーパス」

 ここ数年の潮流として、企業の成功を決定づける要素として「パーパス」の重要性がますます注目されています。しかし、パーパスとは具体的に何を意味し、どのような効果をもたらしてくれるのでしょうか?

 企業や組織の「パーパス」は、よく「存在意義」と和訳されます。この組織が、なんのために世に存在しているのか。我々が世界に対して果たすべき使命は何か。これをわかりやすく、力強い言葉で表現するのがパーパスです。

 企業のパーパスが注目され始めたのは、米国トップ企業CEO約190名で形成される団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、2019年に「企業のパーパスに関する宣言」を発表した頃からです。

 この宣言は、長年の間企業経営の中心にあった「株主資本主義(shareholder capitalism)」から、すべての利害関係者を重視する「ステークホルダー資本主義(stakeholder capitalism)」への転換を提唱したことで注目を集めました。具体的には、次の5点について会員企業のコミットメントを約束しています。

・期待に応える、またはそれ以上の価値を顧客に提供すること
・従業員に投資すること(公平な報酬、教育、多様性・公平性・包括性への投資)
・サプライヤーと公平に、かつ倫理観を持って取引すること
・地域コミュニティを支援し、持続可能なビジネスを通じて環境を保護すること
・株主に対し長期的な価値を還元すること

 この宣言からもわかるとおり、パーパスは、単なる利益追求を超えた、企業や組織が存在する意義、そして社会に対して果たすべき役割と責任を重視するものです。顧客に対してどのような価値を提供するのか、従業員にとってどのような存在であり続けるのか。そして、社会全体に対してどのように貢献するのかを簡潔に定義します。

 パーパスは同時に、企業固有のアイデンティティの表現でもあります。したがって、パーパスは組織の方針、戦略、カルチャーを導く土台となります。