VUCA時代の到来が
パーパス経営の潮流に
パーパスはなぜ最近になってこれほど注目されるようになったのでしょうか?背景には、社会全体で見られるいくつかの潮流があります。
・VUCA時代への対応
本記事の大前提となっているVUCA時代の到来があります。企業はその環境下で、複数のプロジェクトを走らせ、イノベーションを起こし続けなければならなくなりました。そのプロセスも当然一筋縄ではいかず、絶えず発生する想定外の問題に対応しなくてはなりません。
意思決定に遅れが生じ、部署間での方向性がずれてしまうと、従業員のエンゲージメントや組織の競争力自体が損なわれてしまう恐れがあります。
パーパスは、「なぜ今この取り組みをやるのか」という意義・意味合い(Why)を提供する役割を果たします。これにより、それぞれの部署が置かれている立場や扱う課題が違っていても、決めるべきこと、行うべきことを素早く特定し、集団としてそこに意義を見出すための土台として機能するのです。
・グローバリゼーションと組織・人材の多様化
終身雇用を前提に同じ会社に勤め続け、国内市場向けに「高水準の製品を均一に素早く届ける」というモデルが中心だった頃は、従業員一人ひとりが同じ方向性を共有し、足並みを揃えるという考え方が当然でした。したがって、パーパスの必要性はさほど高くありませんでした。
多様性が高まる日本企業で
北極星のような役割
しかし現在、人口減少とともに内需が減少するなかで、外国人労働力の採用・育成は急務であり、外国市場の開拓は日本企業にとって死活問題です。さらに、中途採用や副業解禁などが進むにつれて、働き手の多様性も急速に高まっています。
そのようななかでパーパスは、背景や価値観が異なる従業員の連帯を高め、全体として進むべき方向性を示すいわば北極星のような役割を果たします。