・持続可能性への意識の高まり
 気候変動、資源の枯渇、生物多様性の喪失といった環境問題は、企業活動を超えた社会全体が直面する最も困難な課題の1つです。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(統治))は、当然のように聞かれる言葉になりました。

 企業がその経済活動を通じて社会的課題を解決し、その結果として自社の成長と価値向上を実現していくべきであるという考え方が、主流になりつつあります。

 その背景には、消費者の意識の変化もあります。特に若い世代を中心に、製品やサービスを選ぶ際にその企業の社会的・環境的な配慮や倫理的な姿勢を重要な判断基準とする購買行動が目立つようになってきました。

 企業が明確なパーパスを掲げ、自社が果たす社会的な意義を明確に示すことがますます求められているのです。

パーパス経営の実現が
企業活動にもたらすメリット

 社会的な要請に応えるという文脈を超えて、パーパス経営を実現することは企業活動にとっても大きなメリットをもたらします。

・従業員の満足度とエンゲージメントの向上
 自社のパーパスに対する従業員の共感度と従業員のモチベーションには相関関係があるとさています。就職の際にその会社のパーパスを重視するという人も増えており、企業にとってパーパスは、優秀な人材を惹きつけ維持するための重要な役割を担っているといえます。

・従業員の自律性を促す
「自ら考え、自ら動く人材を増やしたい」という課題は、私自身、多くの企業人事や組織の幹部から相談を受けるテーマです。パーパスは組織にとって最も大上段の方向性と判断基準を示すものであるため、パーパスが明確であればあるほど、従業員がそれに沿って自ら考え、取り組みを推進するための後押しとなります。

・イノベーションを促進する
 力強く明確なパーパスは、組織が現状に満足することなく、その実現に向けて変化を遂げようとする力を生みます。また、変化には組織内部の抵抗や困難がつきものですが、「パーパスを実現するため」という大義が、変化を推進する従業員に決意と胆力をもたらします。