タバコ規制はWHOの圧勝
アルコール規制の現実味は?

 では、なぜこんな話をしているのかというと、マスコミが報じないだけで、実態として日本は「飲酒による犯罪天国」なので、これからWHOが仕掛けるアルコール規制の動きが本格上陸したら、「タバコ」と同じくひとたまりもない、と警鐘を鳴らしたいからだ。

 筆者は2000年代後半からタバコの問題を取材してきた。当時はタバコ会社や政治家に禁煙規制の可能性を聞いても、「はあ? タバコが体に悪いなんて嘘っぱちだよ」「もし飲食店を禁煙にしたら日本中の店が倒産して大パニックだよ」なんてバカにされた。

 しかし、WHOが「受動喫煙防止」という世界戦略を定めて、IOC(オリンピック)のパートナーとなってから、あれよあれよという間に、オリンピック開催地を起点に禁煙規制が広がっていく。

 この世界的なタバコ規制の流れに対して、日本のJTは「吸う人も吸わない人もここちよい世の中へ」という多様性路線で対抗。日本独自の「分煙」というソリューションを打ち出したが、結局は惨敗だった。

 これは当然だ。「喫煙者だけではなく周囲の人間も健康被害を受ける」という受動喫煙は、「吸わない人」はちっとも心地よくない。「社会への悪影響」にフォーカスを当てたWHOの作戦勝ちだ。

 そういう戦いを長年見てきた経験から、今回のアルコール規制も全く同じことが繰り返される可能性は高いと思っている。

 アルコールは体に悪い、しかし社会全体への影響はもっと悪い――。そんなメッセージで各国政府にプレッシャーをかけていくのだ。そうなったとき、先ほど紹介したような「飲酒関連の犯罪」が日常茶飯事となっている日本は反論のしようがない。

 タバコのときも「日本には日本のマナーがある!」「タバコも立派な文化だ!」と抵抗をしたが結局、WHOの軍門に下ったように一度、「社会への悪影響」が指摘されるとそれを跳ね返すのは不可能だ。しかも、そんな逆風の中で、「大きな悲劇」が起きてしまうと、飲酒運転厳罰化のときのように一気に規制が強化されるかもしれない。