首都圏の中学入試は1月10日の埼玉から始まった。2025年はこれまで志願者数日本一を続けた栄東を開智と開智所沢が蹴落とした。この劇的なまでの変化が実現した三つの要因と、2月から始まる東京と神奈川に与える影響について考えてみよう。(ダイヤモンド社教育情報)
驚天動地の「前年比志願者数2倍増」
2025年中学一般入試は、1月10日の埼玉から本格的に始まった。新型コロナウイルス禍の3年間を挟んで、栄東のようにA日程を2日間に分割、大宮開成のように同じ入試回でも開始時間差を設けて二つに分けるなど、受験しやすい環境づくりに工夫が凝らされてきた。
24年までは、全国で一番多くの受験生が押し寄せる入試は栄東(A日程)で24年には8018人が出願した。ところが25年は、前年に開校した開智所沢中等教育学校の登場と、開智と開智所沢の入試制度のシンクロ化が功を奏して、埼玉中学受験の様相が一変してしまった。
埼玉県総務部学事課は、1月8日に「令和7年度埼玉県私立中学校・中等教育学校入試応募状況(昼間)」を6日時点での集計として公表している。31校・3704人の募集に対して、7万6599人が応募しているというものだ。24年が4日時点での集計だったため単純に比較はできないものの前年比で1万6000人も増えている。その多くを占めるのが開智所沢と開智である。
13日までに公表された数値(24年比増減)で比べてみると、1月実施全入試回の合計では、開智所沢1万5600人(8081人増)、開智1万4868人(7207人増)といずれも前年比2倍増なのに対して、栄東は1万3323人(672人減)、埼玉栄は5226人(203人減)といずれも5%ほど減少している。
このような大逆転が起きた要因は、主に三つ指摘できる。青木徹・開智学園理事長の「経営戦略」、70歳にして初代校長に就いた小野正人氏による「積極的な攻勢」、そしてグループ校間で進めた「入試制度のシンクロ化」である。
以前、3回に分けて公開した青木理事長インタビューにもあるように、同じレベルの学校を横に展開する開智学園の経営戦略は、国際バカロレア(IB)的な学びを適用することにより、中堅層の生徒の底上げに教育の目標を置いている。二極化が進むいまの日本で、一番弱まっている部分でもある。
一方の佐藤栄学園グループは、栄東から埼玉栄へと学力レベルの上位から中位をカバーして、そのエリアの受験生を幅広く集めることができる縦展開を進めてきた。その点、開智流の横展開では、学校を設けた各エリアの中堅層を集めることにより、チェーンストア経営的な戦略が適用できる。