2月東京・神奈川入試に及ぼす影響

 開智所沢・開智と栄東・埼玉栄の入試回ごとの志願者数の増減を比較すると、東京・神奈川の2月入試も含めた2025年首都圏中学入試の特徴も見えてくる。

 分割された栄東[A]([ ]は入試名、以下同じ)は、10日[東大]と11日[難関大]で選ぶことができる。四谷大塚の模試での偏差値を基に見ると、10日は難関校レベルで、受験者数は、24年が5522人(男子3660人、女子1862人)で実倍率は1.5倍だった。合格者には[難関大]へのスライド合格も含まれている。出願者数で見ると、24年の5597人から25年は5179人と減少している。難しそうな入試は敬遠されがちなのだ。それは24年に2325人が受験して実倍率1.9倍だった11日[難関大]の出願者数が、24年の2421人から25年は3893人と大きく増加していることからもうかがえる。

 埼玉栄は、入試を医学・難関大・進学の三つのクラスで区分することで受験生の難度差に対応している。10日[1回]の出願状況を見ると、24年1940人に対して25年は1801人で、開智・開智所沢連合にだいぶ食われた様子がうかがえる。それは10日午後[2回]でも同様(24年1886人、25年1330人)だが、面白いことに、11日以降はいずれも増加している。具体的には、11日[3回](24年475人、25年813人)、11日午後[4回](24年610人、25年727人)、13日[5回](24年518人、25年555人)といった具合だ。これはその分、他校の受験生を奪っている可能性が大きい。 

 開智開智所沢は同じ入試内容なので、一緒に記すが、10日[1回]は開智が中堅校レベルで開智所沢が中位校レベルとなっている。25年出願者数(24年実績)は開智4046人(2525人)、開智所沢4114人(2309人)といずれも大きく増やしており、中堅・中位の受験層にアピールしたことが分かる。この層は、東京や神奈川でも同様だが、ここ数年高まる中学受験熱のボリュームゾーンである。

 11日は[特待A]で、開智は上位校レベル、開智所沢は中堅校レベルに難度が上がっている。開智2312人(931人)、開智所沢2535人(910人)と、1回に比べると出願者数は大きく減少することが分かる。とはいえ、25年の勢いは凄まじい。栄東[難関大]の増加も同様の受験層を集めた結果なのだろう。

  12日は栄東が難関校レベルの[東大特待][東大特待算数]を設定、合わせて1281人(1497人)の出願となっている。これに対して、開智開智所沢は24年の12日午後から11日午後に[算数特待]を移すことで、栄東の受験生を前倒しで獲得しようとした。その結果、出願者数は24年の840人から2210人と2.6倍に増加している。同様に開智所沢も882人から2417人と2.7倍増した。

 こうしたライバル校間での露骨な入試日程のさしかえはあまり東京や神奈川では見られないものの、午後入試への新規参入などでは競合状況が25年も強まっている。また、世田谷区の1日午後での大人気入試回だった東京都市大学付属と東京農業大学第一は、前者が先行する形で1日午前入試に参入、後者も25年から加わることで、受験生の移動に影響を与えることになる。

 また、以前の「予想記事」でも指摘したように、25年中学入試の三つの特徴のうち、「難関疲れ」により、東京・神奈川のほとんどの難関・上位校は受験生が減少傾向にある。詳しくは、この後に順次公開する予定の男女受験生別「2月1日入試最終予測」(午前・午後)などをご覧いただきたい。